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【石川】金箔 曇らす材料高 「安定資産」高止まり続く

2022年5月19日 05時05分 (5月19日 09時54分更新)
金箔を使用して行われる仏壇の装飾品の箔押し作業。金相場の高止まりで、影響が懸念されている=金沢市で

金箔を使用して行われる仏壇の装飾品の箔押し作業。金相場の高止まりで、影響が懸念されている=金沢市で

  • 金箔を使用して行われる仏壇の装飾品の箔押し作業。金相場の高止まりで、影響が懸念されている=金沢市で

文化財修復 延期も 後継育成に影響

 ウクライナ情勢の深刻化で安定資産とされる金の価格が高騰し、金沢市の金箔(きんぱく)業界に影を落としている。コロナ禍で観光需要が落ち込んだ中、金箔を使った化粧品や工芸品は採算悪化を覚悟して値段を据え置く企業が多い。神社仏閣の修復作業の延期なども見込まれ、職人育成に支障が出ると懸念を強めている。 (高岡涼子)
 日本の金価格の指標となる田中貴金属工業の小売価格が年明けから高騰。一グラム当たりの過去最高価格は四月二十日に八千九百六十九円まで上昇した。今月十八日時点で八千三百六十八円とやや下がったが、三年前の五月は四千円台だっただけに、高止まりが際立つ。
 金沢箔は全国の金箔生産の99%を占めるとされ、美術や工芸、建築と多様な業界の装飾に使われている。
 金箔の美容パックやあぶらとり紙、食用ふりかけなど、多彩な金箔製品を扱う箔座(金沢市)。ゴールデンウイーク期間中は観光客が戻り、同市東山の店舗はにぎわったものの、高岡美奈社長は「一般向けの商品はジャンルごとに相場がある。金価格が急騰したといってそれを反映させるわけにはいかない。これだけ上がると収益的に厳しい」と苦しい胸の内を明かす。
 仏壇・仏具業界にもしわ寄せがきている。豪華な加賀蒔絵(まきえ)の装飾で知られる伝統工芸「金沢仏壇」の製造会社の担当者は「金箔は欠かせず、心苦しいが上昇分はお客さまに負担していただくしかない」と語る。製造会社に金箔を卸す今井金箔(同)の担当者は「一般的な仏壇・仏具なら金箔以外の装飾を選ぶ会社も出てくる」と危惧。箔一(同)の担当者は「代替が可能な場合は、銀箔など別の材料を提案している」と話す。
 神社仏閣や文化財の修復も、金箔を使う作業工程の延期や中止の動きが広がる可能性が高い。石川県箔商工業協同組合によると、和紙を使った伝統的製法「縁付(えんつけ)金箔」の職人は現在十八人で、平均年齢は六十九歳。人手不足と高齢化が課題となっている。山賀直久事務局長(74)は「仕事が減ると後継者育成の機会が失われてしまう。神社などには前もって必要分を発注してもらうよう申し入れているが、価格高騰は当面続きそうで、それも難しい」ともどかしさを口にした。

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