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金高騰、伝統工芸揺らす 金箔メーカー苦境、需要減に追い打ち―金沢

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今井金箔本店で販売している金箔を使用した商品=4月25日、金沢市

今井金箔本店で販売している金箔を使用した商品=4月25日、金沢市

  • 手作業で金箔を作る職人=4月25日午後、金沢市
  • 【図解】金価格の推移

 金の価格高騰が、金沢市の伝統工芸「金箔(きんぱく)」産業を揺らしている。安全資産の代表格とされる金は、ロシアによるウクライナ侵攻で上昇基調を強め、田中貴金属工業によると、5月10日に店頭小売価格は1グラム9794円と過去最高値を更新。原材料高が需要減や人手不足に追い打ちをかけており、メーカーからは「苦しい」との声が漏れる。

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 石川県箔(はく)商工業協同組合によると、金沢市には金箔の製造や販売を手がける企業が約80社集積し、国産金箔の99%を生産。用途としては仏壇や仏具が中心だが、仏壇を置く家庭が減り、2022年度の生産額は16億円と、1990年度(136億円)の1割強に落ち込んだ。

 「値上げしないと赤字になる。苦しい状況だ」。老舗メーカー今井金箔の担当者は、金の高騰に頭を抱える。販売価格に転嫁すれば金箔の需要がますます減り、漆などへのシフトが加速する恐れがある。金箔製造時にわずかに生じる厚さのむらを省くなどコスト削減努力を続けるが、繊細な手作業をこなせる職人も業界では不足気味だ。

 国の伝統的工芸品に指定されている「金沢仏壇」を製造する池田大仏堂は、「金箔を使うことに二の足を踏む」と苦しい胸の内を明かす。金の高騰に伴い金箔の価格も上がり、仏壇の需要減少を後押ししかねないためだ。顧客の予算に合わせるため、仏壇の裏側など目立たない部分の金箔使用を極力減らすといった工夫で対応している。

 金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎氏は、今後の金の価格について「夏に向けて最高値を再び更新する可能性が高い」と指摘する。金沢市の担当者は、地場産業の苦境に「国や県の様子を見ながら、行政としてできることを検討したい」と話している。

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