米ファスト・カンパニー

会員制ディスカウントストア大手の米Costco(コストコ)が、金価格が高騰する昨今、店頭で独自の「ミニ・ゴールドラッシュ」を生み出している。金の購入に釣られて、顧客が店頭に足を運ぶことを期待してのことである。

1トロイオンスの金の延べ棒。画像はイメージ。スイスの銀行大手CreditSuisse(クレディスイス)が発行する。Costcoの金の延べ棒は裏面にレディー・フォルチューナの像が彫られている(出所/edwardolive/stock.adobe.com)
1トロイオンスの金の延べ棒。画像はイメージ。スイスの銀行大手Credit Suisse(クレディ・スイス)が発行する。Costcoの金の延べ棒は裏面にレディー・フォルチューナの像が彫られている(出所/edwardolive/stock.adobe.com)

 最近、金(ゴールド)が大人気だ。金のスポット(現物)価格は2024年4月上旬に史上最高値を何度か更新し(※編集部注:1トロイオンス当たり2400ドル[約36万円]が視野に入っている)、地政学的な不安と米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測をめぐる不確実性が上昇要因とされた。

 これらは伝統的な金買いのきっかけだが、最近では、潜在的な「ゴールドバグ(金投資を好む人)」にとって通常の市場以外に金を買う場所がある。米Costco(コストコ)だ。

 会員制ディスカウントストアをチェーン展開するコストコでは、売り上げ拡大と最近の配当増額に乗って、株価が過去1年間で46%急騰した。同社は23年夏、巨大な瓶入りマヨネーズやトイレットペーパーのバルク、その他の食料品や日用品のジャンボ版でおなじみの膨大な品ぞろえに地金を加え、1トロイオンス当たり約2000ドル(約30万円)で販売している。

 買い物客の大部分が商品を気に入ったようだ。米銀大手Wells Fargo(ウェルズ・ファーゴ)は最近、コストコは月に1億~2億ドル(約150億~300億円)相当の「ゴールドバー(金の延べ棒)」を販売していると試算した。

SNSで話題沸騰、売れ行きが急加速

 23年9~11月期決算でコストコが3カ月間の金の販売が1億ドル(約150億円)だったと報告していたことを考えると、Wells Fargoが試算した数字は目を引くものだ。米CNBCが番組で引用した投資家向けメモの中で、同行は「積極的な価格設定と顧客からの高い信頼がその後の販売を押し上げた」と指摘した。

 「米の掲示板サービスReddit(レディット)への投稿頻度が加速していることや、オンライン販売ですぐに売り切れることは、発売以来、勢いが急激に増したことを示唆している」(Wells Fargo)

 実際の金は、重さ1トロイオンスのPAMPスイス製「レディー・フォルチューナ」の形で売られている。ローマ神話に出てくる繁栄の女神像が刻印された長さ5センチ程度の延べ棒だ。このゴールドバーは(少なくとも断続的には)限られた数のコストコ店舗で購入できるが、大半はオンラインで一括販売(上限は顧客1人当たり5枚)されており、飛ぶように売れているようだ。一般的な金の価格と同様、コストコのゴールドバーの価格も変動するが、スポット価格を2%ほど上回る価格に設定されている模様だ。

 買い手にとっては、人類が知る最も由緒ある価値貯蔵手段の一つを買う場所として、コストコはアクセスしやすく、信頼できる場だ。近年、金はよく市場の不確実性に対する潜在的なヘッジ(リスク回避)として宣伝されている。

 もっとも、ロン・ポール元下院議員やドナルド・トランプ前大統領の元側近スティーブ・バノン氏が出演するトークショー番組の広告でうたわれている、どこか不穏な戦略としてなじみが深いものかもしれない。

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