コラム:金相場の下落は終息せず、米金融緩和縮小で

コラム:金相場の下落は終息せず、米金融緩和縮小で
11月21日、金相場の下落局面は終息には至っていない。米連邦準備理事会(FRB)が金融緩和を縮小するとの観測から金相場は1オンス=1250ドルを若干下回る水準にまで下落、2011年につけたピークより35%低い水準となった。6月5日撮影(2013年 ロイター/Shannon Stapleton)
[ロンドン 21日 ロイター BREAKINGVIEWS] - Ian Campbell
金相場の下落局面は終息には至っていない。米連邦準備理事会(FRB)が金融緩和を縮小するとの観測から金相場は1オンス=1250ドルを若干下回る水準にまで下落、2011年につけたピークより35%低い水準となった。
FRBが実際に債券購入プログラムの縮小(テーパリング)に着手すれば、投資家は金からの逃避を続けるだろう。つまり金相場は実需に大きく左右されることになる。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、第3・四半期に投資家の金需要は前年同期比56%減少した。金を投資対象とする上場投資信託(ETF)の資金フローは、第2・四半期が183億ドルのマイナスだったのに続き、第3・四半期は51億ドルの純流出となった。金に投資するETFとしては最大規模を誇るSPDRゴールドは第3・四半期末時点で2008年半ばよりも41%ほど多く金を保有しているが、足元で償還ペースが鈍化しても、それほど希望が持てるわけではない。
FRBのテーパリングに伴って金を保有する機会費用は増え続けるだろう。それは投資家の流出を持続させることになる。では金相場を下支えしている他の要因はどうなるだろうか。
金の工業用需要は年間400トン程度で安定して推移している。だが中央銀行の動向は先行き不透明だ。中銀は2011─12年に年間平均で500トンの金を購入。これは同じ時期にETFが購入した金の2倍となる水準だ。ただ中銀の金需要は13年1─9月期には前年同期比で4分の1ほど減少している。かつては金の買い手だったロシアは9月に小幅な売り越しに転じている。
あらためて言うが、FRBのテーパリング観測は新興国市場からの資本流出を誘発しており、金相場下落の主犯格だ。新興国経済がキャッシュで溢れ返っている局面では、金は有用な投資先だった。来年には中銀は自国通貨を押し上げるため金の売却さえをも強いられる可能性がある。
宝飾品としての金の需要は09年以降は高水準の金価格によって弱まっており、年間1927トンと03─08年から22%減少している。ただ今年は中国が主導する形で若干増えている。これは東方の地平線の果てにある有望な兆候とも解釈できるだろう。だが足元では、今年の金需要は全体で09年以来の低水準となりそうだ。09年は金相場が初めて1オンス=1000ドルと突破した時期だ。今回は、当時とは相場が逆方向に動いて1000ドルの水準に達する可能性もある。
<背景となるニュース>
●金相場は21日、FOMC議事録で政策当局者が今後数回の会合のいずれかで金融緩和の縮小に着手する可能性が示されたことを受け、2.5%安と4カ月ぶりの低水準に下落。下落率は10月1日以来の大きさだった。
●ヘッジファンドのポールソン・アンド・カンパニーは第3・四半期にSPDRゴールド・トラストの保有規模を維持した。ポールソンは第2・四半期には同ETFの持ち高を半分以上減らしていた。
●SPDRゴールド・トラストは第3・四半期末時点で906トンの金を保有。第2・四半期の保有高は968.3トンだった。
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