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スタンダードバンク相場予想 「シルバー」2014-10-01(第4四半期)

「貴金属相場予想」



シルバーに対する見方は変わりません。相場はまだ下を向いていると考えます。ゴールドとは違い、シルバーははるかに大きい産業用需要があり、それは需要全体の40%を占めます。それゆえに製造業の景況がシルバー価格の動向に大きく関係してきます。

しかし、現在のように地上在庫が十分に存在する状況では投資需要が重要であり、もっとも大きな価格を動かす要因となっています。米国の実質金利が上昇すると、ゴールド価格と同じようにシルバー価格にとってもマイナス要因となります。米国実質金利とシルバー価格との間にはとても強い反比例の関係があります。(Figure 1)ただ、工業用需要が大きいだけにゴールドとくらべると幾分は弱い関係ですが。ゴールドのパートで書いたようにこれから先1年の市場の大部分の予想は米国の実質金利が上昇する、というものであり、この「予想」自体がシルバーマーケットの頭を抑えると考えます。

シルバーETFは未だ粘り強くロング保持

シルバーETFの残高は粘り強く残っています。ただここ数ヶ月間はその増加の勢いが目立って減ってはいますが。(Figure 2)上昇する米国実質金利とともにこのETF残高はシルバー価格にとっては潜在的な脅威だと考えます。



ほかのメタルと同様にシルバーにとっても中国は重要なプレイヤーであり、シルバーでも現在は輸入国となっています。二つ知っておいたほうがいい重要な点があります。

まず第一に2010年から2012年に輸入された大量のシルバーにより、まだ国内には相当大量のシルバー在庫があると考えられます。我々の推測では300日分の国内での消費量、4000トン以上のシルバーがあるはずです。(Figure 3 & Figure 4)



よいニュースとしては中国国内での在庫は安定してきていることですが、ETFの残高と比べると中国の在庫はまだ小さなものです。

シルバー輸入のスピードは緩まり、少なくとも年末までの間それが回復するとは思えない

二番目、それもシルバーに対する消極的見方になるのですが、これまでの中国のシルバー輸入は我々の期待よりも弱いものであったということ。2014年のスタートではその輸入のペースはよかったのですが、その後ペースは落ち、今後も少なくとも年末までの間それが回復するとは思えません。(Figure 5)このスローダウンは、弱まった投資需要と産業需要の伸びの減少そして国内の在庫によるものです。

シルバーの生産コストは、現在の相場と比較して格段に低いのでシルバーの生産が減るとは思えません。(Figure 6)その上、亜鉛の価格が上昇傾向にあり、2016年以降には再び亜鉛の増産があるとその副産物としてのシルバーも生産量が増えることになります。



シルバーのリスクは短期的には価格下落にあり、上昇は長続きしないという見方は維持

戦術的観点から、シルバーのリスクは短期的には価格下落にあり、上昇は長続きしないと考えます。ファンダメンタルズ、需給はゆっくりと改善しつつありますが、ETFの売りのリスク、中国の在庫過多の状況が重しとなり、戦略的長期ポジションを取る時には注意が必要です。短期的には15ドルまでの下落があり得ると予想します。これ以下のレベルは逆に投資価値が出てくると考える。米国の金利の正常化(上昇)が、このような売りを呼び込むきっかけになるかもしれません。18-24ヶ月かけて米国の金利サイクルが正常化すれば、シルバーの戦略的長期的投資には環境もよくなると考えます。



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岡藤商事株式会社

プロフィール

池水 雄一

Yuichi Ikemizu

スタンダードバンク東京支店長

1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産貴金属リーダー、2009年より世界一の金取引量を誇るスタンダードバンクの東京支店長に就任し、現在に至る。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界の貴金属ディーラーでBruce(池水氏のディーラー名)を知らない人はいないと言われている。著書に「THE GOLD ゴールドのすべて」など。

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