ゴールドコラム & 特集

中国のゴールド輸入緩和と中国のゴールド保有量

3月19日の木曜日に中国の中央銀行である中国人民銀行と中国税関が共同で、現在ゴールドの輸入が許されている12の銀行のみならず「要件を満たす全ての中国企業にゴールドの輸入の許可を出す」ことを発表。これは今年2015年4月1日から施行されることになりました。これまで最初の四大銀行(中国銀行、中国工商銀行、中国建設銀行、そして中国農業銀行)のゴールド輸入許可から始まって、近年徐々にその数は増えていき、現在は12行がゴールドを輸入することができるようになっていました。そして今回の新しいポリシーは事実上の輸入自由化に大きな一歩を踏み出すことになったのです。この発表は「唐突」な印象を否定できませんが、問題はその「要件」の内容です。それを今週はまとめてみましょう。

A. ゴールドキロバーやラージバーなどのゴールド地金を輸入するための要件を満たす5つのカテゴリー

  1. SGE(Shanghai Gold Exchange)のFI(Financial Institution;金融機関)メンバーであり、SGEでの現物及び自己ポジションでの取引を2年以上継続していること。
  2. SGEのComprehensive (総合)メンバー;年間のゴールド生産量が10トン以上で、環境汚染対策が、国家環境標準に合致し、海外のゴールド鉱山に対する投資が5000億ドル以上あり、海外の鉱山権利を取得、国内外の関係ある法律の違反をしていないこと。2年間以上のSGEでの活発な取引を現物及び自己ポジションでおこなっていること。
  3. 鉱山会社で、SGEのメンバーではない企業でも、過去3年間1年あたり200万元以上を納税し、非鉄分野の海外投資に100万ドル以上出資し、鉱山権を取得、国内及び国外の関連法規に違反のないこと。
  4. 国が発行する記念金貨の製造者
  5. 国際貴金属マーケットでの認知されたブランドを目指している精錬業者。(具体的にはLoco London good deliveryになることを目指している会社)

B. ゴールドの製品を輸入するための要件を満たす3つのカテゴリー

  1. 製品を生産する道具や設備としてそのゴールドの製品を使用し、環境保護法に合致し、100万元以上の税金を3年以上納めていること。
  2. 税関に登録された輸出入貿易会社であり、300万人民元以上の税金を過去3年間納めていること。

(香港から中国へのゴールド輸出量)



「中国のゴールド保有高に関する推測」



上の表はBloombergに出ている中国の国家としてゴールドの保有量の推測です。白は生産量と輸入量から推測された中国のゴールドの総量(民間+中央銀行)。青色は中央銀行の保有量の推測です、

この推測では直近2013年の数字は以下の通り。
中央銀行+民間の推測ゴールド保有量:4983トン
発表されている中央銀行のゴールド保有量:1054トン
需要修正後の中央銀行の推測ゴールド保有量:2315トン

としています。

国全体としての保有金(白棒)は以下の数字が足されたものです。

2013年見込み:鉱山生産=420トン、輸入= 1110トン
2012年 鉱山生産= 403トン、輸入522トン
2011年 鉱山生産= 360トン、輸入329トン
2010年 鉱山生産 = 340トン、輸入 180トン

推測される中央銀行の金保有増加量(上記の数字から、宝飾需要54%、工業需要3.4%、その他需要1.3%を引いたものを中央銀行の増加量と計算)

2013年 628トン
2012年 380トン
2011年 283トン
2010年 214トン
2009年 157トン

実際の中国人民銀行のゴールド持ち高がどれくらいあるのかはいまだにミステリーでありますが、2008年に発表された1054トンがずっとそのままであるというのはやはりあまりにナイーブな考え方でしょう。2013年の強烈な中国の買いはさすがに民間だけの仕業と思うのには多すぎます。その意味では生産量と輸入量そして国内での需要量から、中国人民銀行の保有ゴールドの量を推測するのは意味あるやり方だと思います。

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岡藤商事株式会社

プロフィール

池水 雄一

Yuichi Ikemizu

スタンダードバンク東京支店長

1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産貴金属リーダー、2009年より世界一の金取引量を誇るスタンダードバンクの東京支店長に就任し、現在に至る。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界の貴金属ディーラーでBruce(池水氏のディーラー名)を知らない人はいないと言われている。著書に「THE GOLD ゴールドのすべて」など。

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