ゴールドコラム & 特集

ゴールドの持つさまざまなリスク耐性は 強固なポートフォリオ構築に有効

機関投資家のための運用情報誌「オル・イン」Vol35 Spring,2015(2015年3月)号より。

昨年1年間の世界の金需要は、およそ3923.7トン。金額にして約1598億ドルで、前年対比では重量ベースでマイナス4%、金額ベースではマイナス14.1%の減少となった。2013年の金価格の平均が1オンス(約31.1グラム)あたり1411.2ドルであったのに対して、2014年は1266.4ドルであり、およそ10%の価格低下にともなう金額ベースでの減少が大きい。

 金需要減少の主な要因は、2013年に熱狂的に金需要が高まった中国で前年比マイナス33%と大幅減となったことが大きい。中国と並ぶ2大需要国のインドは、政府による金の輸入抑制策にも関わらず、婚礼などの伝統的需要に支えられて14%減にとどまった。

 各国で個人の需要が減少するなか、前年比プラスとなったのが中央銀行による金購入で、前年比17%増の年間477トンと、5年連続で購入が売却を上回った。金準備を増やした国ではロシアが173トンと突出しており、ウクライナ情勢をめぐる対ロシア制裁が影響していると考えられる。その他、新興国を中心にドル依存からの分散目的の購入が目立つ。

 一方日本では、円安の影響で円ベースの金価格に割安感はなく、消費増税の影響もあって、宝飾品需要は過去最低水準にとどまった。しかし金に対する消費者の人気は根強く、また機関投資家からの注目度も上昇傾向にある。

■金を組み入れる意義は下振れリスク抑制だけではない

伝統的資産のパフォーマンスは、株高、債券高、円安と3拍子揃って2014年度も堅調を維持している。良好な運用環境のもと、積立不足が解消しつつある年金基金も多いが、財政的に余裕が出たとはいえリスクをとって株式の比率を上げる動きは少ない。むしろ下振れリスクを意識したポートフォリオの構築や、リスクを抑えつつアルファの獲得を図るなど、ポートフォリオの強化に取り組む動きが目立つ。そこで重要なのは、内在する多様なリスク要素に対するバランスをポートフォリオ全体で考えながら、新たなベータや新たな戦略を組み入れる方策である。

 金(ゴールド)は、さまざまなリスク要素に対して唯一無二の特性を持っており(図参照)、金をポートフォリオに組み入れる理由も1つではない。また、金の組み入れ比率は前提条件やリスク許容度にもよるが、5%程度が最適であると、シミュレーションの結果は示している。

 機関投資家にとっての投資方法は、金現物を裏づけとするETFの利用が一般的である。また現在では、日本の信託銀行でも金に投資する年金向け合同口が設定されており、金のエクスポージャーを容易にポートフォリオに組み入れることができる。


図:ポートフォリオ運用にかかわるリスク要素と金(ゴールド)の特性


詳しくはワールド ゴールド カウンシルのレポート、「資産クラスとしての“金”」(2011年9月)、「日本の投資家にとってのテールリスクと金の役割」(2012年12月)、「ポートフォリ
オのリスク管理と金投資の役割」(2013年11月)、「日本の投資家にとっての金の最適保有比率」(2012年2月)、「金の特性:外見は金属、本質は通貨」(2014年10月)を参照。

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オル・イン(for All Institutional Investors)は、ヘッジファンドやプライベートエクイティ、不動産といったオルタナティブ投資はもちろん、株式・債券の伝統的運用もカバーする、機関投資家向けの「総合運用情報誌」です。年4回(3月、6月、9月、12月)発行。

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