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ナチス・ドイツの金塊発見か?

ポーランド系のメディアで8月中旬、2人のトレジャーハンターがナチス・ドイツの金塊を発見した可能性があるとの報道が流れた。正確には、ナチスの金塊、宝石、武器などを満載した状態で、第二次世界大戦末期の1944年から1945年にかけて行方が分からなくなったと噂されている列車を、ポーランド西部の都市ヴロツワフ近郊で発見したとの発表である。

ポーランド国内の報道によると、地下のトンネル内で武装した全長150メートルの列車が発見され、最大で300トンの金塊を摘んでいるとされている。これは、世界の年間産金量の1割近くに相当する規模であり、現在の価値に換算すると約1兆4,350億円となる。ドイツ人とポーランド人とされる2人の発見者は弁護士を雇い、ポーランド当局に対して10%の取り分を主張している。

従来からこのヴロツワフ近郊ではナチスの財宝が隠されているといった噂があり、多くのトレジャーハンターが探索を続けてきていたものの、戦後70年にわたって「発見」されることはなかった。ただ今回は正規の鉄道輸送用のトンネル跡地ではなく、ナチスが財宝の隠ぺい用に掘った廃墟トンネルを探索したことで、「発見」につながったとされている。

■ポーランド当局の調査結果待ち

さすがにこの時点では、日本の徳川埋蔵金伝説などと同じレベルの信頼性の低い「発見」発表と思われていた。仮に列車を発見したのが事実としても、それがナチスの金塊を積んでいるのかは強い疑いがあり、国際金市場でも多くの金塊伝説の一つに過ぎないとの見方が優勢だった。

しかし、ポーランド文化省が28日の記者会見において、1)この発見はナチスの金塊列車の隠ぺいに携わった人が無くなる直前に残した情報に基づくものであり、2)地下に列車の形をしたものが埋まっているレーザー画像が当局に提出されたこと、などを明らかにしたことで、にわかにナチスの金塊発見が本物か否かの議論が活発化している。

なおポーランド当局は金塊発見の有無については態度を保留している。しかし、仮に武装列車の発見だけでも事実とすれば、何か貴重なものを輸送していた可能性が高く、金塊ではないにせよ、宝飾品、武器、更には絵画などの発見につながる可能性もある。少なくともポーランド当局が公式な調査に乗り出しているのは間違いなく、近く世紀の大発見の発表か、または、埋蔵金伝説の一つが消滅するのか、いずれにしても大きな動きがありそうだ。

2013年にイングランド銀行(英中央銀行)が発表した報告書によると、ナチスがチェコスロバキアから略奪した金塊の売却にイングランド銀行が積極的に協力していたことが明らかにされるなど、ナチスと金塊との関係については最近になって分かり始めたことも多い。チェコスロバキアは、ナチスの侵攻を恐れて国際決済銀行(BIS)に保有する口座に金を預けていたが、その一部はイングランド銀行内の金庫に保管されていたため、イングランド銀行がその売却に関与することで、ナチスの財政を潤すことに貢献していたことが歴史的な事実として明らかにされている。これは「中央銀行の歴史上最悪の愚行」とも言われているが、ナチスと金塊との関係が、また一つ明らかにされるかもしれない。

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プロフィール

小菅 努

Tsutomu Kosuge

マーケットエッジ株式会社 代表取締役

1976年千葉県生まれ。筑波大学卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。

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