ゴールドコラム & 特集

ナチスの金塊

まるで小説の題のようですが、その小説のような話が実際に起こっています。今週は少し軽めにこういう話題を。8月の半ばにイギリスの国営放送であるBBCが報じたニュースです。

「ナチの金塊を積んだ列車がポーランドで見つかる」

8月中旬、一人のポーランド人と一人のドイツ人という二人組が1945年にWroclawというポーランドの都市の近くで行方不明になったというナチスの財宝を積んだ列車を見つけたと発表しました。ポーランドのマスコミによると、この二人は分け前として見つけたものの価値の10%の支払いを求めているとのことです。

これはこの地方に伝わる言い伝えで、ゴールドと宝石を積んだナチの列車が、第二次世界大戦の終わり頃、Ksiaz castleという城の近くで消えたというものがあり、今回の発見の報はその言い伝えと合致するものだと受け取られています。この二人が、この発表をしたのはKsiaz castleから3kmしか離れていない町の法律事務所を通してでした。

このニュースが発表されて以来、地元では弁護士、陸軍、警察、消防などが調査を開始しているようです。そして、発見したと主張する二人組は現地の市長の下に急遽結成された緊急委員会と協力してこの主張の検証に当たっているとのことです。地元のウェブサイトによれば、この列車は150mの長さで、300トンものゴールドを積んでいる可能性があるということです。当時からの「噂」によれば、この列車はあるトンネルの中に消えてしまい、ゴールドと同時に何か「危険なもの」を積んでいるということ。これまで何度となくこの地域の調査はなされてきたようですが、これまでは何も発見できなかったということです。



そして、この8月末、今度はポーランド文化省の副長官がこの「ゴールドトレイン」は99%ありえる話であると記者会見で語りました。この話は第二次世界大戦終戦当時、実際この列車の処理にかかわった人間が死ぬ間際に語ったこととして、伝わっていると言いました。ポーランドはこのニュースが出てから、第二次世界大戦マニアや鉄道マニアがこの列車を探して大騒ぎになっていますが、それを中止するように呼びかけています。危険な物資が入っている可能性があるからです。しかし、これによりこの話に真実性が増してきました。この地域は第二次世界大戦前から大戦を通してドイツの領土であり、1943年頃からナチスのプロジェクトによって盛んに地下工事がなされた地域でもあります。ポツダム宣言の後、ポーランドの国境が西に延びたことによって、この辺りはポーランド領となりました。

発見したという二人はまだその場所を明らかにしていないようです。もし本当にゴールドが300トンも発見されるとすれば、その所属はどこになるのか。ポーランドのものなのか、それともドイツのものとなるのか。はたまたユダヤ人に返されるべきものなのか。数量が数量だけに、ゴールドの相場にも影響があるかもしれません。まるでミステリー小説そのままのような話ですが、果たして本当に見つかるのかどうか、そして、もし見つかったらその後の処理はどうなるのか。非常に気になりますね。


岡藤商事株式会社

プロフィール

池水 雄一

Yuichi Ikemizu

スタンダードバンク東京支店長

1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産貴金属リーダー、2009年より世界一の金取引量を誇るスタンダードバンクの東京支店長に就任し、現在に至る。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界の貴金属ディーラーでBruce(池水氏のディーラー名)を知らない人はいないと言われている。著書に「THE GOLD ゴールドのすべて」など。

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