コラム:金が安全資産として輝けない理由

コラム:金が安全資産として輝けない理由
 1月25日、金は資金避難先としての本来の値動きが見られない。都内の貴金属店で2013年4月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)
Swaha Pattanaik
[ロンドン 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 金は資金避難先としての本来の値動きが見られない。世界的に株価が急落して投資家は厳しい状況にさらされたが、金が安全資産としての輝きを取り戻すには、もっとひどい混乱が必要なのかもしれない。
昨年11月以降でS&P総合500種が8%下がっているにもかかわらず、金価格は3%強下落した。今月20日には世界的な株安を背景にMSCI世界株指数が3%余り値下がりしたのに、金の反発は月初来高値にあとほぼ3ドルという地点までにとどまった。
投資家のパニックが金のより大きな反発につながらないのはそれなりの理由がある。
まずはドル高だ。金価格はドル建てで換算され、通常はドルが高くなると逆に値下がりする。例えば11月以降でもポンド建てでは5%近く上昇していた。そして米連邦準備理事会(FRB)が利上げを開始した以上、保管コストや保険料を払ってまで金を持つ魅力はやや低下している。
アジアの金需要も弱まると予想される。投機目的で金を買う傾向にある中国の個人投資家は国内の株安で痛めつけられており、成長率が鈍化しているため買いには慎重な姿勢を強めるかもしれない。欧米ではインフレへのヘッジとして金を買おうという意欲は、投資家の間に存在しない。たとえこれから物価が上向くとしても、それは経済活動が活発化したシグナルと受け止められ、投資家は金よりもリスク資産の買いに動くだろう。
別の問題として、金が安全資産という面で信頼性をやや落としていることが挙げられる。過去10年では金相場に追随する上場投資信託(ETF)が急増し、ナティクシスのアナリストによるとこうしたより投機色の強い買い手の需要が金融危機後にはほぼ3倍に増え市場全体の約25%を占めるまでになった。この種の投資家は現物で長期保有を望む投資家に比べると逃げ足が速く、価格の不安定度が高まってしまう。
金は恐らくこれからも最後の安全資産であり続ける。本格的な金融のメルトダウンが起きたり、ドルが一転して急落すれば、金に対する需要は回復する可能性がある。もっともそうなると、市場はこれまで直面せざるを得なかった事態よりもさらに恐ろしいニュースに見舞われることになる。
●背景となるニュース
*金価格は昨年11月初め以降で3.3%下落した。25日0900GMT現在は1オンス=1102.80ドル。この間、S&P総合500種は8%下がった。
*今月20日に金価格は一時2%上がって1109.20ドルをつけた。この日はMSCI世界株指数が3.4%下落して2年半ぶりの安値に沈む場面があった。ただ金は月初来高値の1112ドルを超えることはできなかった。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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