金価格の上昇は、これからがいよいよ本番だ 1ドル100円割れなら中期で「買いのチャンス」

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金は経済危機や政治の混迷が深まると輝きを増す。金投資は、このまま金融緩和が続くなら有効な投資になりそうだ(田中貴金属工業が販売する地金、撮影:尾形文繁)
金投資の人気が復活してきた。今年1月の日本銀行によるマイナス金利政策の導入発表を機に、国債に投資しても償還(満期)まで持てばおカネが減るという異常事態が定着する中で、資金逃避先として金が脚光を浴びている。さらに、英国のEU離脱問題(ブレグジット)などで国際情勢も不透明さを増し、安全資産の筆頭格として注目がさらに高まった。果たして人気復活は本物か。金融・貴金属アナリストであるマーケット・ストラテジィ・インスティチュートの亀井幸一郎代表に展望を聞いた。

マイナス利回りの国債は「安全資産」とは言えない

中長期的な投資スパンで考えれば、金はここからさらに「買い」のスタンスで考えていい。各国の中央銀行が突出した緩和政策を続けており、国債相場はバブルと化している。国債はもはや安全資産ではなくなりつつある。そうなると、この先予想されるのは、国債のバブル崩壊に対するリスクヘッジとして、安全資産の筆頭である金が買われる展開だ。短期的に調整売りを繰り返しながらも、金が値上がりする環境は今後も続く。

金投資は伝統的にインフレに対するヘッジの手段として考えられてきた。今後求められるのは、「通貨バラマキ策」の弊害で起きる国債価格急落への備えとしての、資金の安全な逃避先としての需要だ。

金融市場と金、それぞれの市場規模を見ると、金融膨張に対するリスクヘッジとしての需要が本格化した場合、そのマグニチュードは極めて大きなものとなる。

金の生産は全世界で毎年3100トン程度。時価にしてわずか14兆円程度しかない。一方、日銀だけでも毎年80兆円の国債を買い入れているように、金融の膨張は甚だしい。2009年以降過去7年、金市場の規模は相対的小さくなっている。金融市場にとっては小さな資金シフトでも、金市場に与える影響は大きなものとなる。

改めて今年の相場の流れを振り返ってみよう。値上がりの転機となったのは1月だ。当時は信用売りの残高が過去最高レベルに膨らんでいた。そこから上海株の下落や人民元の切り下げ、原油価格の急落によって、金のカラ売りが解消に向かい、結果、金価格の上昇につながった。

そして、2月に入ると新規の資金も入ってきた。転機となったのが、まさに1月29日に日銀が発表したマイナス金利政策の導入だ。海外の市場関係者は、まさか日本までがマイナス金利に追いやられるとは考えていなかった。金融政策の手詰まり感が強まったことで、金の先物や金価格に連動した上場投資信託(ETF)、金鉱株に資金が集まった。4月以降は米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ観測が遠のき、ブレグジット問題や根強い中国経済の先行き不安などから、さらに金の価格上昇に弾みがついた。

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