NY金、10カ月ぶり安値圏 市場関係者に聞く
米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げ実施を受け、ニューヨーク市場の金先物相場は急落した。日本時間15日午前の時間外取引では1トロイオンス1140ドル台で推移し、約10カ月ぶりの安値圏にある。今後の金相場の行方を市場関係者に聞いた。
■「今が底値、来年はインフレ懸念などで反発」
豊島逸夫・豊島&アソシエイツ代表
米国の利上げに伴う金の下落を市場は織り込んでおり、想定内の下げ幅だ。逆に今回の利上げで弱材料が出尽くし、年内は1トロイオンス1130~1140ドルで推移するだろう。
市場の関心は金相場が反転をうかがう来年の世界経済の行方に移る。トランプ次期大統領が打ち出している米国の財政出動は財政赤字となりドル売り・金買いの転機になるかもしれない。
米国でのインフレ懸念も金相場の反発材料だ。賃金の上昇や財政出動に加え、原油価格も上昇してきた。インフレヘッジ(回避)の金買いが活発になると予想する。新興国経済の減速や欧州混乱のリスクも有事の金買いを意識させるだろう。
■「米連邦準備理事会(FRB)の積極姿勢で金急落、今後はトランプ政策次第」
上野剛志・ニッセイ基礎研究所シニアエコノミスト
FRBが利上げに踏み切ったのは市場の予想通りで、驚きではなかった。一方、政策金利見通しで2017年に3回の利上げを見込み、FRBが利上げに積極的な姿勢を示した。金利が上昇すると、金利のつかない金の魅力は低下する。
今後はトランプ米次期大統領の政策次第だ。市場はトランプ氏のインフラ投資などの財政拡大路線が米国の景気や株価を押し上げるとの見方を織り込んでいる。大統領に就任し、政策のかじ取りをうまくこなせば、米景気は底堅さを増す。利上げペースが速まれば、金相場の押し下げ材料になる。
ただ、トランプ氏の政策への過度な期待は、いずれ剥落するだろう。FRBは17年に3回の利上げを見込んだが、米景気が急ピッチで良くなることは考えにくく、個人的には3回の利上げは難しいとみている。金が1トロイオンス1100ドルを割ることは考えにくい。
17年にはオランダ議会選、仏大統領選、ドイツ議会選がある。反欧州連合(EU)勢力が政権を樹立し、ヨーロッパに混乱がおこるという政治リスクが意識され、比較的安全な資産とされる金価格の上昇要因になるだろう。