世界最大級の金ETF、イスラム法に「適合」 米運用会社
金市場に新たな資金が流入へ――。米運用会社のステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズは、金に投資する上場投資信託(ETF)が、イスラム法(シャリーア)に適合しているとの認定を受けたと発表した。ETFは従来、イスラム法に適合するか曖昧だったが「お墨付き」を得たことでイスラム圏からの投資が活発になりそうだ。
金融商品がイスラム法に適合しているかを判断する、世界的に権威のあるマレーシアの助言会社アマニー・アドバイザーズが代表的な金ETF「SPDRゴールド・シェア」を認定した。ステート・ストリートが営業を展開しており、純資産残高は約300億ドル超。金地金に裏付けされた世界最大級の金ETFで、ニューヨーク証券取引所に上場している。東京証券取引所にも2008年に上場、日本の投資家にも人気のある金融商品だ。
イスラム教では教義上、利子の受け取りなどが禁止されている。ETF投資はイスラム法に適合するかが不透明で、イスラム圏の投資家が投資に二の足を踏む例もあったという。
今回の認定の下地となったのが世界的な金の広報調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の活動だ。WGCは中東に拠点を置くイスラム金融機関会計監査機構(AAOIFI)に、金取引に関するイスラム法上の基準の策定を打診。昨年12月にAAOIFIは基準を公表し、アマニー社の認定に至った。
イスラムでは伝統的に金の現物取引は活発だ。アラブ首長国連邦(UAE)やエジプトなどのスーク(市場)には多くの宝飾店が軒を連ね、金地金や金貨、宝飾品が取引されてきた。WGCでETFを担当するジョセフ・カバトーニ氏は「2兆ドル規模のイスラム金融市場での金需要に応える重要な一歩。イスラム教徒も金ETFへのアクセスが可能になった」と強調する。
今回の認定で戒律に厳格なイスラム教徒は、イスラム法に適合するETFを運用資産に組み込むことができるようになる。アジアでイスラム教徒の人口は急増しており、新たな投資家を生み出す可能性がある。
WGCによると16年の世界の金需要は約4300トンと15年比2%増加した。金ETF関連の需要は約531トンと09年以来の高水準。英国の欧州連合(EU)離脱決定やトランプ氏の米大統領選出など、地政学的な不安の高まりが背景にある。
世界的に需要が高まる一方、中東は前年比で16%減少した。原油安や観光客の減少が響き、特にUAEの需要は19年ぶり低水準だった。ただ、足元では産油国の減産で油価は堅調。今回の認定も追い風となり、中東などイスラム圏からの金投資が活発になりそうだ。