焦点:金相場の下落は限定的、米利上げでも政治リスクが下支え

焦点:金相場は米利上げでも下値不安薄い、欧米政治リスク支え
 3月10日、米FRBが追加利上げに踏み切るとの見方から、金価格に下落圧力が掛かっているが、米欧の政治情勢が不透明な現在、安全資産である金の下落は限定的とみる専門家が多い。写真は金地金。台北で2011年4月撮影(2017年 ロイター/Nicky Loh)
[10日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が来週、追加利上げに踏み切るとの見方から、金価格に下落圧力が掛かっている。しかし米欧の政治情勢が不透明な現在、安全資産である金の下落は限定的とみる専門家が多い。
昨年12月半ばの米利上げ後、金価格は10カ月ぶりの安値に沈んだ。来週14、15日の連邦公開市場委員会(FOMC)は追加利上げがほぼ確実視されているが、投資家は前回ほど神経を尖らせていないようだ。
12月の相場下落は、米大統領選でのトランプ氏勝利をはやして株価が上昇したことも背景にあった。しかしトランプ氏の政策がはっきりしない上、欧州各国で控える選挙への懸念もあり、金は底値からいったん約7%反発した。
その後、金は2月24日の高値から約5%下げて現在はオンス当たり1198ドル前後となっている。
UBSウェルス・マネジメント(香港)のアナリスト、ドミニク・シュナイダー氏は「利上げ予想は金相場に織り込み済みだ。(年)4回の利上げ観測が高まれば別だが、当社の見るところ、それはありそうにない」と言う。
シュナイダー氏は「トランプ大統領の政策が失望を誘う可能性はかなり高い。議会が彼の思うように動かないだろう」と付け加えた。
利子を生まない金は、金利が上がると魅力があせる。ドル相場の上昇も、他通貨建ての買い手にとって金価格を押し上げるという難点がある。
<建玉が増加>
COMEXではヘッジファンドなど投機筋による金の買い建玉が今年3倍近くに膨らんだ。しかし絶対水準で見ると2月28日時点で12万1720枚と、2016年7月の28万6921枚の半分にも満たない。当時は投機的な金買いがピークに達し、金価格が2年ぶり高値の1374.91ドルをつけていた。
このためコメルツバンクのアナリスト、カーステン・フリシュ氏は、投機ポジションが巻き戻された時に価格が急落する恐れは小さいとみる。
UBSのシュナイダー氏は、主要国で幅広く物価が上昇していることも、債券の魅力を損ねて金相場を支えると指摘。「価格が1200ドルを割り込んだ水準には実需が存在する」と言う。
英国の欧州連合(EU)離脱や、欧州各国での選挙といった政治リスクも金相場の支援材料となりそうだ。
INTL・FCストーンのアナリスト、エドワード・メイル氏は「フランスの大統領選がFRBの利上げの影響を相殺するだろう。今年はドイツ、オランダ、イタリアでも選挙があり、どれも予想外の結果になる可能性を秘めている」と言う。
デグサ・プレシャス・メタルズ・アジアのマネジングディレクター、マイケル・ケンピンスキ氏は「価格が1150ドルに近付くと力強い実需が確認できる。特にドイツ市民は購入に熱心だ。ドイツでは利上げのことなど話題に上らない。欧州の人々は日々、不透明感に対峙しており、価格が下がればさらに買う」と語った。
(Sethuraman N R記者 Arpan Varghese記者)

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