廃家電からメダル… そこから生まれる五輪レガシー
編集委員 北川和徳
連休の初日、自宅近くの中学校に開設された臨時回収所に使わなくなった携帯電話などをまとめて持っていった。ガラケーが4台に携帯音楽プレーヤー2台、デジタルカメラ1台、ノートパソコン1台など小さな段ボール1箱分もあった。少しだけ2年後の五輪・パラリンピックに参加したような気分になった。
「都市鉱山からつくる! みんなのメダルプロジェクト」は各家庭に眠る小型廃家電から金、銀、銅を取り出して東京大会の表彰台でアスリートに贈るメダルを製造する取り組みだ。
■ガラケー100台から金3グラム
では、どこに持っていけばいいのか。携帯電話やスマートフォン、タブレットならドコモショップへ。他の小型家電も一緒に出したいのなら、日本環境衛生センターの専用HP(http://www.toshi-kouzan.jp)でプロジェクト参加自治体の回収拠点を調べることができる。3月の時点で、全国の7割を超える1404自治体が協力している。
2020年大会で必要な金銀銅メダルは各約1700個。金メダルは銀の土台に6グラムの金をメッキして作られる。それぞれの重量は金が約10キログラム、銀は約1200キロ、銅は約700キロの計算になる。
ガラケー100台で約3グラムの金を取り出せるという。金メダルだけならガラケー約33万台で賄える。量が多い銀は簡単ではないが、さほど高いハードルではなさそうだ。
だが、ゴールはメダルを都市鉱山の発掘で製造することではない。このプロジェクトをきっかけにして、日本に小型廃家電のリサイクルシステムを定着させることだ。
家電大国である日本の都市鉱山の埋蔵量は世界でも有数で、資源国に匹敵する規模があるという。金銀銅に限らず、さまざまな希少金属が都市鉱山には眠っている。それをフルに活用できるようになれば、持続可能な社会の実現に向けて大きな前進となる。
20年大会のレガシー(遺産)の意味を考える時、メダルプロジェクトはとても分かりやすい具体的な事例だと思う。新国立競技場など大会後に残るハードはレガシーのほんの一部にすぎない。人々の意識や社会のポジティブな変化を生み出せるかどうかにこそレガシーの本質がある。
(20年東京五輪開幕まであと814日)