コラム:安全資産としての輝き増す金、通貨戦争勃発で

コラム:安全資産としての輝き増す金、通貨戦争勃発で
8月21日、安全資産にも甲乙があり、昨今は金が最も優位に立っている。写真は金の延べ棒。ミュンヘンで14日撮影(2019年 ロイター/Michael Dalder)
Swaha Pattanaik
[ロンドン 21日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 安全資産にも甲乙があり、昨今は金が最も優位に立っている。貿易戦争と地政学的緊張の高まりでスイスフラン、円、さらには一定程度でドルも安全資産としての魅力が高まっている。しかし最も輝いているのが金だ。
金は3カ月弱で15%近く値上がりし、1オンス=1500ドル(約16万円)近辺と約6年ぶりの高値で取引されている。ドル建てで取引される金はドル相場と逆相関の関係にあるだけに、ドルが堅調に推移する中でのこれほどの値上がりは目を見張るものがある。
金の保有コストはかなり重いが、投資家はこのごろは安全資産である国債にも保有コストを求められる。景気後退となれば政策金利は一段と引き下げを余儀なくされるだろう。一部の政策金利は既にマイナス圏に沈んでいる。
通貨戦争の懸念のため金への支出はなおさら価値あるものに見えるようになっている。手に負えない通商紛争は、あからさまな通貨切り下げ競争を自制する時代に幕を引いたように見える。通貨高による輸出への打撃と戦うと口にすることが再び時流となりつつある。
流れを変えたのはトランプ米大統領だ。同氏は7月、中国と欧州が為替を操作しており、米国は対抗すべきだと宣言した。
トランプ氏のいら立ちはさらに強まるかもしれない。武内良樹財務官は今月、必要であれば市場介入の用意があると示唆し、スイス国立銀行(中央銀行)のジョルダン総裁は金融緩和を一段と進める可能性に言及した。
対照的に、金相場の上昇を止めようとする者はいない。
中央銀行にとって金相場の上昇は喜ばしい可能性すらある。中銀の昨年の金購入は過去2番目の高水準を記録している。中銀がこうした金の購入に動いたのは、米国が国際政治的な目的のために金融システムでのドルの影響力を行使する意向を強めていることと関係があるかもしれない。
いずれにせよ金を保有することで中銀の準備高がたなぼた的に増すのなら、金は何よりも素晴らしい資産ということになるだろう。
●背景となるニュース
*金相場は6月1日から15%近く上昇し、13日には一時1オンス=1534ドルと6年ぶりの高値を付けた。20日は1499ドルで取引された。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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