「史上最高値祭り」は一時中断。5月上旬から複数銘柄が調整中

 以前の「お祭か!?史上最高値更新が相次ぐ。商品高→インフレ→金高シナリオの裏側」で書いた、コモディティ(商品)相場の全体的な上昇は、中断しつつあります。

 以下の図は、複数の主要銘柄が史上最高値を更新し、お祭りの様相を呈していた時期の騰落率です。

図:2021年4月16日から5月7日の騰落率

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 木材価格の上昇は、「ウッド・ショック」などと呼ばれ、米国の(一部日本でも)住宅建材価格を押し上げる要因となりました。また、穀物や植物油関連銘柄の上昇は、わたしたちの食生活に欠かせない、マヨネーズやマーガリン、食用油の小売価格を押し上げました。

 一方、以下の図「2021年5月7日から5月28日の騰落率」は、その後の同じ銘柄たちの騰落率です。全体的な流れが変わりつつあることがわかります。

図:2021年5月7日から5月28日の騰落率

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 抽出した主要銘柄における、4月16日から5月7日までの上昇銘柄数は17、下落銘柄数は4でしたが、5月7日から28日までは、上昇銘柄数が6、下落銘柄数が15でした。5月上旬を境に、多くの銘柄が調整し始めました。

 指標となる国際価格の下落が始まってから、関連する末端の製品(住宅建材や食用油関連の製品)価格の下落が始まるまでは、時差があるため、一時的に上昇した末端の製品価格がすぐさま下落するわけではない点に、留意が必要です。

「お祭り中断」は、ビットコインの急落開始と個別下落要因の出現によるもの

 5月上旬を境に、多くの銘柄が調整しはじめました。一時、複数の銘柄が同時に大きく騰勢を強めて「お祭り」の様相を呈しましたが、そのムードが中断しつつあるわけです。

「お祭り中断」の背景の一つに、ビットコインなどの暗号資産の下落が挙げられると、筆者は考えています。以下は暗号資産の主要銘柄である、ビットコインとイーサリアムの価格推移です。

図:暗号資産の価格推移

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 ともに、全体的なムードが変化し始め、「お祭りの中断」が鮮明になった5月上旬から、大きく下落しています。ビットコインはおよそ40%、イーサリアムはおよそ30%、下落しています。

 このような暗号資産の大幅下落は、市場全体の景気回復ムードに水を差し、一時的に、これまで底流してきた「期待先行」の好ムードを弱めるきっかけになっていると考えられます。

※「期待先行」については、以前のレポート「お祭か!?史上最高値更新が相次ぐ。商品高→インフレ→金高シナリオの裏側」  の「期待先行相場」は、期待の対象を入れ替えながら膨張している、をご参照ください。

 以下の図は、「期待先行」の好ムードが暗号資産安起因のリスクオフで弱まったことに、各コモディティ市場の個別の下落要因の発生を加えた、筆者が考える、5月上旬以降の全体像です。

図:「実態なきインフレ」一部損壊のイメージ.

出所:筆者作成

 5月上旬以降、「全体」および「個別」の両面で下落要因が発生し、コモディティ(商品)相場が調整していると言えます。