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金相場フラッシュクラッシュ、一時4%超の急落-強気になれない理由

金相場が9日のアジア時間に一時、3月以来の安値に急落したことは金が抱える厳しい現実を浮き彫りにした。相場に対する悲観的な見方は増えつつある。

金と銀価格が下落、米金融当局がテーパリング近く開始との見方

  今回の急落はテクニカル要因と低い流動性が重なって増幅されたものだが、そもそものきっかけは先週末の米雇用統計が市場予想を上回る強い内容となり、米経済の順調な回復ぶりが示されたことにある。米金融当局が債券購入のテーパリング(段階的縮小)を開始する準備が整うと、この統計により受け止められた。金相場を昨年、過去最高値に押し上げた主要材料の一つが取り除かれる可能性を意味する。

米雇用者数、7月は予想上回る94.3万人増-失業率は大幅低下 (2)

  インフレは対処可能との見通しが強まっていることやドル上昇も、金にとって逆風だ。金価格に連動する上場投資信託(ETF)も、今年に入って金保有高を大幅に削減している。金現物はニューヨーク時間9日午前9時21分現在、1.2%安。アジア時間には一時4.1%下げた。

  投資家はまず、今週発表される米国の物価統計に注意を向けることになる。その後は今月下旬に開催されるジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)で、米金融当局者がどういったシグナルを送るかが強い関心事だ。米金融当局による引き締めのタイミングが鍵を握る。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長がタカ派的な発言をすれば、金にとっては明確な弱気相場の開始となり得る。

  金相場はここから下落基調に向かうのだろうか。注目すべき5つのチャートは以下。

乏しい勢い

  市場予想を上回る米非農業部門雇用者数が発表された後の今回の金相場下落は、インフレ調整後の米国債利回りが急上昇したことによって引き起こされた。同利回りは金利の付かない金を保有する上での機会コストを左右する。

  しかし、同利回りがより深いマイナス圏に沈んでいた過去1カ月ほどの間も、金に追い風は吹いていなかった。このことは今年に入ってからの相対的に弱い金の値動きが、投資家のセンチメントをいかに損ねてきたかを示す。金はモメンタムが強い時に上昇する資産であり、相場が長期にわたり低迷している場合は勢いが弱いまま放置される可能性がある。力強い経済指標を受けて実質金利が一段と上昇すれば、今後も急落することがあり得る。

Gold failed to profit from falling real yields in the past month

ドルの回復

  金が昨年力強いパフォーマンスを示す原動力となったのは、ドル安が長期間続いたことだった。しかし今年に入って、その傾向が逆転している可能性が示唆されている。これが金への圧力となっている。

The dollar has treaded water after a protracted decline in 2020

一過性のインフレ

  利付国債とインフレ連動国債の利回り差であるブレークイーブン・レートが、年限が長くなるにつれ低くなっていることが示すように、インフレは一過性だとの見方を市場は織り込みつつある。このことは、現在の物価上昇が不健全なものではなく統制の範囲内であることを含意する。これは金にとりプラス材料ではない。  

Bond markets see inflation dipping lower in the long run

テクニカル要因

  9日の取引では、ヘッド・アンド・ショルダー(週間ベース)と呼ばれる相場パターンのネックライン(両ショルダーの下の谷を結んだ線)を割り込んだ。弱気派を中期的に勇気付けるチャート上の節目だ。今週の相場がネックラインを上回って終わらなければ、テクニカル分析上、相場見通しは暗いままとなるだろう。

Gold tracing Head and Shoulders top as prices drop to 100-week SMA

アジアの買い手

  金相場に希望があるとすれば、インドのような主要市場での宝飾品需要の復活だ。宝飾品業者は通常、押し目買い狙いなので金相場を高値に押し上げることはないともみられるが、相場の下支えとなるはずだ。

Imports Rebound

India sees biggest gold inflows in three months in July

Source: India's Finance Ministry Official

原題:Flash Crash Shows Why It’s Tough to Be Bullish on Gold Right Now(抜粋)

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