エジプトのエル・バナーサで、黄金の舌を持つ古代エジプトのミイラが発見された。
Egyptian Ministry of Tourism and Antiquities
- エジプトのエル・バナーサで男女のミイラが発見された。
- これらのミイラは、冥界の神と話すために口の中に黄金の舌が納められた状態で埋葬されていた。
- 極めてまれなことだが、墓の1つは完全に密閉された状態で発見され、ミイラの保存状態は極めて良好だった。
カイロから南に約200キロメートル離れたエル・バナーサで、2つの墓から約2500年前に死んだ男女のミイラ3体が発見された。
エジプト観光・考古省によると、墓の外で3つの「黄金の舌」のお守りも発見されたという。3つのうち2つは大きめで、1つは3歳の子どものものだった。これらは紀元前30年に始まるエジプトのローマ領時代のものだと、The Nationalが報じている。
3つの「黄金の舌」のうち、2つはサイズが大きく、もう1つは3歳の子どものものだった。
Egyptian Ministry of Tourism and Antiquities
古代エジプトでは、死者が死後の世界で冥界の神オシリスと話ができるように、死者の口の中に金箔を施した舌を入れることがあった。
墓のうちの1つは、紀元前664年から同525年のサイテ王朝のもので完全に密閉されていた。これは非常に珍しいことだ。
墓からは石灰岩でできた棺が見つかり、その中には黄金の舌を口に入れた男性のミイラが入っていた。保存状態は極めて良好だという。他にもコガネムシの形をしたお守り、防腐処理を施された臓器が入った4つのカノプス壺、陶器でできた400個の人形などが副葬品として納められていた。
バルセロナ大学の考古学ミッション共同ディレクターであるエスター・ポン・メラード(Esther Pons Mellado)は、「完全に密閉された墓を見つけることは滅多にないので、今回の発見は非常に重要だ」とThe Nationalに語っている。
完全に密閉されたミイラの墓が見つかることはほとんどない。
Egyptian Ministry of Tourism and Antiquities
もう1人のミッション共同ディレクターであるメイテ・マスコート(Maite Mascort)は「我々はまだ、棺に刻まれた碑文を分析しているところであり、これが解読できれば、埋葬されていた人物の身元が明らかになるだろう」と、La Vanguardiaに語っている。
女性のミイラが埋葬されていたもう1つの墓は、過去に荒らされた形跡があるものの、それほど悪い状態ではなかったとメラードはThe Nationalに語っている。墓の中には他にも、陶器のビーズ、石のお守り、鷹の頭をしたホルス神の像が納められていた。
今回の発見は、30年近くこの地域で活動してきたスペイン主導の考古学者のチームによるものだと、エジプト観光・考古省は声明で述べている。
男性のミイラの墓からは、陶器でできた埋葬用の人形が、約400個発見された。
Egyptian Ministry of Tourism and Antiquities
マスコートによると、1体のミイラの包帯の上からパピルスが発見され、研究者がそれを慎重にめくって分析しているところだという。
ミイラが発掘されたオクシリンコス遺跡は、紀元前664年から紀元7年の時代のもので、これまでに発見された考古学的遺跡の中でも最大かつ最も重要なものの1つとされている。
この遺跡では長年にわたって発掘調査が行われ、プトレマイオス朝やローマ帝国の属州だった時代にさかのぼるパピルス文書が発見されている。
2021年2月には、アレクサンドリアでも黄金の舌を持つミイラが発見されている。
メラードによると、黄金の舌はアレクサンドリアとエル・バナーサの遺跡でしか発掘されていないという。
[原文:Ancient Egyptian mummies with gold tongues were discovered inside a tomb dating back 2,500 years]
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)