佐渡金山の世界遺産推薦、首相が表明 「今年が近道」
岸田文雄首相は28日、新潟県の「佐渡島の金山」について国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産への登録を推薦すると表明した。安倍晋三元首相ら自民党内の主張に配慮し、外務、文部科学両省の推薦見送り方針の転換を決断した。
首相は28日夜、首相官邸で記者団に「本年申請を行い早期に議論を開始することが登録実現への近道であると結論に至った」と述べた。
2月1日に閣議了解する方針を示した。2023年の登録をめざす。官邸に登録に向けた省庁横断のタスクフォースを設置する。
佐渡島の金山は21年12月に文化庁の文化審議会が推薦候補として答申した。韓国政府は太平洋戦争の際に朝鮮半島出身者が動員されたとして登録に反対している。
委員国の合意が得られず多数決となれば、21カ国で構成する世界遺産委員会で3分の2以上の賛成が必要になる。外務、文科両省は韓国が反対を関係国に働きかけて登録が見込めないとみた。
韓国側が報復で世界遺産登録に向けて慰安婦の資料などを取り上げる可能性も警戒した。
首相官邸は当初、両省に任せる構えだった。変わった契機は自民党で推薦を迫る意見が広がったことだ。
安倍氏が20日に安倍派会合で「論戦を避ける形で申請しないのは間違っている」と主張した。高市早苗政調会長は24日の衆院予算委員会で「国家の名誉にかかわる」と林芳正外相に迫った。
外務省の根回しもちぐはぐだった。世界遺産委員会がいったんだめだと判断した場合、再び推薦し登録に至った例はないと官邸に説明していたが、内容を変更して推薦し直した例があることがわかり前提が覆った。
安倍氏らの背後には韓国への毅然とした対応を望む保守層がいる。首相は夏の参院選で安倍政権時代の岩盤支持層の離反を警戒した。