焦点:金価格、各国・地域の金融緩和にも反応薄く

焦点:金価格、各国・地域の金融緩和にも反応薄く
5月24日、4月に急落した金価格は、一段と不安定さを増しているようだ。写真は4月、都内で撮影(2013年 ロイター/Yuya Shino)
[ロンドン 24日 ロイター] - 4月に急落した金価格は、一段と不安定さを増しているようだ。各国・地域の金融緩和政策でインフレ圧力が増しているものの、金価格の下支えには至っていない状況となっている。
過去最低水準の金利が通貨安とインフレ率の上昇につながるとの見方は、金融危機を受けて金価格が過去最高をつける上で大きな原動力となった。
超緩和的な金融政策は依然として人気を集めているが、金価格は年初来で約2割下落しており、このまま推移すれば四半期ベースで15年強ぶりの下落幅となりそうだ。
ここ数カ月、日銀が大胆な緩和政策を打ち出したほか、欧州中央銀行(ECB)やオーストラリア中銀は政策金利を過去最低水準に引き下げた。
米国では、連邦準備理事会(FRB)が量的緩和プログラムの出口戦略に触れる一方、これまでと同様に月額850億ドルの資産買い入れを行っている。
インフレ圧力は抑制されており、株式市場は日本や欧州で数年ぶりの高値をつけ、米国では過去最高値を更新した。
クレディ・スイスのアナリスト、トム・ケンダル氏は「日本などで起きていることは、金を保有する機会コストを実質的に従来よりも高めている」と指摘。今のところ先進国でインフレの懸念はなく、各中銀の緩和政策に伴う資金は株式市場に向かっているとした上で、「投資家がインフレヘッジを気にしていないならば、上昇傾向にあり、幾分の利回りが期待できるそうした(株式といった)資産はとても魅力的になっている」と述べた。
金は広くインフレヘッジの手段として認識されている。
ロイターのデータによると、1オンス当たりの金価格は現在、原油14.8バレルに相当している。
<歴史的には依然高水準>
ミツイ・プレシャス・メタルズのアナリスト、デビッド・ジョリー氏は「米国のインフレ期待は依然として約2%であり、英国のインフレは低下しているほか、欧州のインフレはほぼゼロとなっている。投資家としてみれば、金を購入する必要はない」と指摘。「1年後にインフレが上昇し始め、金価格が1オンス=1100ドル、もしくは1200ドルとなれば、人々は喜んで金を購入するだろう」と語った。
年初来で大幅な下落となっているものの、金価格は歴史的に見れば依然として高水準にある。金価格は2001年の1オンス=250ドルから12年間連続で上昇し、2011年には過去最高値となる1920.30ドルをつけた。
ディーラーらは、この10年間で金価格は4倍増となっているため、インフレ率は大きく上昇するはずだと指摘している。
ユーロ圏や日本、オーストラリアにおける緩和政策で各国・地域の通貨は対米ドルでプレッシャーにさらされており、米ドル指数は3年ぶりの高値をつけている。こうした事情が米ドル建てとなる金価格の重しになっている。
マッコーリーのアナリスト、マシュー・ターナー氏は「自国通貨が対米ドルで下落すると考えるなら、金を購入するのも1つの選択肢だ」と指摘。「もしくは単純に米ドルを買い入れればいい」と語る。
FRBが量的緩和(QE)を縮小・停止すれば、米ドルは一段と恩恵を受けるだろう。特にほかの中銀が緩和モードから脱却しなければなおさらだ。
ただ、金にとってはネガティブだ。テクニカル面で金は一段と下落しやすくなっており、アナリストらは1150─1100ドルまで下げる可能性を指摘している。
クレディ・スイスのケンダル氏は「株式の上昇が急なのではないかとの見方がある程度存在し、金融政策の究極的な効果に対する懸念も根強いかもしれないが、投資家はしばらくの間、そうした懸念はわきに置いておくだろう」と指摘している。
( Jan Harvey記者;翻訳 川上健一;編集 吉瀬邦彦)

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