プラチナや金の価格が高騰 変わるジュエリーづくり

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、指輪などのジュエリーをつくるのに必要な原料の高騰や品不足を招き、メーカーはこれまでのやり方を見直さざるをえない事態に直面しています。ジュエリーづくりが盛んな山梨県での取り組みを取材しました。

パラジウム高騰 代替品でコストダウン

甲府市内にある宝石メーカー「明治堂」は今、生き残りをかけたコスト削減に取り組んでいます。

この会社が主力商品としているのがプラチナです。非常に軟らかい金属のため、パラジウムなどを混ぜて硬くして指輪などをつくります。

しかしパラジウムはロシアが世界の約4割を供給していて、今価格が高騰しています。一時は1グラムあたり1万円を超え、現在も約1.5倍の値段になっているということです。会社は「これ以上高騰すると利益が取れない」と懸念しています。

原材料の調達を担当する神藤周平さんは、高騰するパラジウムを使わず、価格が約4分の1のルテニウムという金属を使ったプラチナに切り替え、製品をつくろうと考えました。これで製造コストを1割ほど抑えられるといいます。

神藤さんはルテニウムでつくったプラチナの特性を調べました。強度の実験では、パラジウムを使ったプラチナは5キロの力を加えると形がゆがみました。

一方、ルテニウムを使ったプラチナはほとんど変形しませんでした。細くて丈夫な指輪も製造可能だといいます。

宝石メーカー 神藤周平さん
「プラチナの全てをルテニウムに切り替えてコストダウンを図りつつ、デザインの幅を最大限に生かすことで、この難局を乗り切って頑張っていきたい」

「都市鉱山」から貴金属を回収

一方、宝石メーカー向けに金やプラチナなどを製造販売する地金のメーカーは、投資の対象として貴金属が値上がりする中、原材料の確保が難しくなっています。

甲府市の地金メーカー「森銀」が力を入れることにしたのが、廃棄物から貴金属を回収する取り組みです。

これまで関東中心だった回収の範囲を全国に拡大したほか、工場に最新の設備を導入して、さまざまな廃棄物から貴金属を回収しています。「都市鉱山」の開発に力を入れているのです。

森善宣社長は、パソコンなどの機器類から出てきた基盤を手にしながら「ここから金とか銀とかパラジウムを取り出します」と説明しました。

貴金属を回収するには、まず廃棄物に特殊な薬品を加えます。すると貴金属だけが溶けだして、成分が濃縮された液体ができます。

さまざまな貴金属が含まれた液を分離、乾燥させて粉末状にします。この粉末が宝の山なのです。金の場合、1トンの基盤から約100グラムを取り出せるということです。

地金メーカー 森善宣社長
「山梨はジュエリーメーカーが集積する場所。しっかり支えていけるような企業をつくっていきたい」

(甲府局 記者 飯田章彦)
【2022年6月3日放送】