堂島取引所は29日、株主総会を開き、SBIホールディングス(HD)出身で同取引所の執行役員を務める村田雅志氏の新社長就任を正式決定した。総会後の記者会見で村田新社長は「まずは貴金属市場の創設に力を注ぐ」と述べ、20日に事実上取引を終えたコメ先物に代わり、金・銀・プラチナの先物市場について早ければ今年12月の取引開始を目指す方針を示した。
村田氏は令和4年度からの3カ年にわたる重点施策を説明した。貴金属先物の市場を創設し、6年度には既存の農産物・砂糖先物の市場での商品も増やしながら3市場の拡充を進める。さらに7年度以降は株価指数などに連動する金融先物などの品ぞろえも増やす計画だ。村田氏は「農産物の堂島取引所から、いろんな商品をグローバルに取引できる新しい取引所の姿を見せたい」と意気込む。
同取引所は令和3年4月に会員組織から株式会社に移行。主要株主のSBIHDが経営に参画し、SBIHD顧問で元金融担当相の中塚一宏氏が初代社長に就き進めてきた。だが、村田氏が「異常事態」と表現したように現在はコメや農産物・砂糖の先物市場の取引が成立しておらず、3年度中に金の先物取引を上場させ、総合取引所化を目指してきた計画も大幅に遅れている。中塚氏はわずか1年余りで退任し、新体制の下で再建計画を進めることとなった。
堂島取引所はコメ先物取引の本上場移行を目指していたが、農林水産省は昨夏、取引不足を理由に不認可とした。そのため、前任の中塚氏は撤退を決めたが、この日の会見では村田氏は考えを一転させて「取引再開に向けた活動を4年度以降も続ける」との方針を示した。同社広報も現段階で具体的な話は決まっていないが「今後再開に向けて検討していく」と説明した。