【7月25日 AFP】ジンバブエは25日、インフレ抑制と米ドル依存の緩和を目的に、金貨を導入した。有名なビクトリアの滝(Victoria Falls)にちなんで「モシ・オア・トゥニャ(Mosi-oa-Tunya、雷鳴とどろく水煙)」と命名された金貨は、純度91.7%(22金)で重さ約31.1グラム。銀行が国際金相場で販売する。

 シリアルナンバー入りの金貨は換金でき、国際取引も可能だ。1枚当たりの価値は22日時点で1725ドル(約23万5000円)相当。購入者は証明書付きで現物を所有するほか、銀行の金庫に預けることもできる。

 政府は、インフレが急進しジンバブエ・ドルの下落が止まらない中で、金貨導入は経済へのてこ入れになると主張している。

 金貨の鋳造枚数は不明。ジンバブエは金の主要産地で、材料には地元産の金を使用する。

 ジンバブエの6月のインフレ率は191.6%で、米ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)のスティーブ・ハンケ(Steve Hanke)教授(応用経済学)によれば、公式数値で世界最悪の水準だ。ジンバブエ・ドルへの信頼は非常に低く、商品やサービスの価格設定はほぼ米ドルが基準となっている。

 ただし、専門家は金貨導入の効果には懐疑的だ。経済学者のプロスパー・チタンバラ(Prosper Chitambara)氏は「マクロ経済を安定させるという点で大きな効果はないだろう」とAFPに語り、ほとんどのジンバブエ国民は非常に貧しく、金貨を購入する余裕はないと指摘した。

 同じく経済学者のギフト・ムガノ(Gift Mugano)氏も、暗号資産(仮想通貨)が普及する中での金貨導入について「金で取引していた19世紀に逆戻りしているようだ」と一蹴。「わが国はもっとデジタル金融やデジタル通貨に注力する必要がある」と述べた。(c)AFP/Fanuel JONGWE