中央銀行の金(ゴールド)購入量は半世紀ぶり高水準

 世界的な金(ゴールド)の調査機関であるWGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)の資料によると、同年の「中央銀行」の純購入量(購入量-売却量)は、55年ぶりの高水準となりました。

図:中央銀行の金(ゴールド)購入量 単位:トン

出所:WGCの資料をもとに筆者推計

 中央銀行は「銀行の銀行」として民間銀行への資金供給、「政府の銀行」として国家の財政収支や通貨(銀行券)の発行などの役割を担っています。また、中央銀行が「利上げ」や「金融政策の動向」などで注目を集めているのは、その国の「物価や雇用」を安定させるべく、「金利」を調整する機能を持っているためです。

 例えば、日本であれば「日本銀行」、米国であれば「FRB(米連邦準備制度理事会)」、欧州であれば「ECB(欧州中央銀行)」、中国であれば「中国人民銀行」が、それらの機能を持っています。

 国家の運営に非常に重要な役割を持つ中央銀行は、通貨危機などによって、他国に対して外貨建て債務の返済が困難になった場合や、為替介入などに使用する準備資産を持っています。これを「外貨準備高」といいます。

 そして、多くの中央銀行が「外貨準備高」の一部を金(ゴールド)で保有しています。冒頭のグラフは、中央銀行(世界合計。IMF(国際通貨基金)、BIS(国際決済銀行)などの公的機関を含む)の外貨準備高を積み上げることなどを目的に購入した量が、2022年、55年ぶりの水準に積み上がったことを示しています。

 ウクライナ危機勃発(2022年2月)以降、西側(欧米や日本など)と非西側(ロシアやロシアに同調する国々)との間の溝が深まり続けています。こうした中で、非西側が、西側が多用する「米ドル」ではない通貨を模索する中で金(ゴールド)が選ばれていると考えられます。

 また、ロシアは、制裁下でも資金の融通を可能にするための「抜け道」として、中国は、ウクライナ危機の混乱に乗じ、「自国通貨の安定化」と「脱米ドル」の両立を加速させる目的で、金(ゴールド)の保有高を増やしている可能性があります。

 こうした背景があり、2022年は中央銀行の金(ゴールド)購入量が増え、以下のとおり、「中央銀行」の購入が需要全体のおよそ4分の1を占めました。金(ゴールド)市場で、「中央銀行」の存在感が増してきているといえます。

図:金(ゴールド)の需要内訳(2022年)