100年前に発見されたツタンカーメン王の5000点を超す副葬品。それらを収蔵する新たな博物館がオープンする。ギザの大ピラミッド群のほど近くに完成した大エジプト博物館は、その外観からして近代的で、実にドラマチック。
「完璧な環境にある完璧な博物館」と絶賛するのは、ナショナル ジオグラフィック協会所属の考古学者であるフレデリック・ヒーバート氏だ。
「エジプト人たちが新しいピラミッドを建造したようなものですね。ツタンカーメンの黄金の財宝をすべて展示するために。その多くが、これまではカイロのエジプト博物館の地下に保管されていて、日の目を見ませんでしたらから」とヒーバート氏は話す。「大エジプト博物館を目指して、世界中から観光客がエジプトを訪れるようになるでしょう」
総床面積50万平方メートル近い新しい博物館には、少年王の墓から見つかった5000点以上の副葬品とともに、合わせて10万点余りのコレクションが収蔵される。しかし、展示スペースはすぐに手狭になってしまうだろう。現在も各地で発掘調査が進められていて、サッカラや3000年以上前に造られたルクソール近くの「黄金の都市」から、250体ものミイラが見つかっている。出土品の中には、古代エジプトの大衆が日常的に使っていた品々も含まれる。
こうした新たな考古学的な発見や、ルクソールのスフィンクス参道の復元は、エジプトには素晴らしい遺産が多くあることを意味しているが、遺跡が危機に瀕しているのも事実だ。たとえば、初期のファラオたちの埋葬地であるアビドスは、都市化と農地開発、地下水面の上昇、廃棄物の不法投棄によって、危険にさらされている。
※「いつか訪れたい旅先25 2023年版」ほか、旅の記事は「旅・文化の記事一覧」でまとめてご覧いただけます。
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ツタンカーメン王墓発見から100年となる2022年、エジプト考古学者の河江肖剰氏に監修と執筆を依頼。ナショジオがこれまで伝えてきた若きファラオに関する記事を集めた。この1冊で、世界一有名なファラオ、ツタンカーメンの謎めいた素顔に近づける。 〔全国学校図書館協議会選定図書〕
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