金価格の高騰を受け、県内の宝飾店などで金の売買が活発化している。地金大手の田中貴金属工業(東京)は14日、金の店頭小売価格を1グラム当たりで過去最高の9609円に設定。ウクライナ情勢や円安の影響に加え、3月に米国で相次いだ銀行の破綻で金融不安が広がり、「安全資産」とされる金に注目が集まっている。

 金は宝飾からIT製品まで用途が広く、不況でも暴落しない安全資産とされ、値上がり傾向が続いている。同社によると、金の平均小売価格は4千円台だった2018年から5年間で倍近くに跳ね上がった。

 同社特約店のソシエハシヅメ総本店(富山市総曲輪)では、金の売り買いに訪れる客が普段は5、6人程度だったが、最近は多い日で20~30人が来店する。橋爪宏昌社長は「少しでも高く売ろうと、金歯やイヤリングの片方など、家にある金色の物をかき集めて持ってくる方もいる」と話す。

 同じく特約店の大坪本店(高岡市片原町)では、売りに来る人だけでなく、500グラムや1キロのバーを買い求める人が目立つという。大坪の山本美紀常務は「現金より現物で資産を持っておこうと考える人が増えている」と説明。今後の相場は読めないとしつつ「さらに値が上がると踏んで高価格の商品を買うベテランのお客さんは少なくない」とした。

 富山県流通センター(富山市城北町)も今年に入って来店客が増え、高止まりの状態という。アジア系の客がネックレスなどを質に入れるケースが倍増しており、江端久芳社長は「物価高で暮らし向きが悪くなり、生活を守るために預ける人もいるのではないか」と話した。