中銀・SWFが海外保有金を本国に戻す動き、対ロ制裁きっかけに

中銀・SWFが海外保有金を本国に戻す動き、対ロ制裁きっかけに
ロシアのウクライナ侵攻を受け、世界の中央銀行や政府系ファンド(ソブリンウェルスファンド、SWF)の間で、金準備を本国に戻す動きが広がっていることが、10日発表のインベスコの調査報告で分かった。写真は金のインゴット。ロシアで1月撮影。(2023年 ロイター/Alexander Manzyuk/File photo)
[ロンドン 10日 ロイター] - ロシアのウクライナ侵攻を受け、世界の中央銀行や政府系ファンド(ソブリンウェルスファンド、SWF)の間で、金準備を本国に戻す動きが広がっていることが、10日発表のインベスコの調査報告で分かった。
毎年実施されるインベスコ・グローバル・ソブリン資産運用調査によると、今年は85のSWFと57の中央銀行の85%以上が今後10年のインフレ率について過去10年よりも高くなると考えている。
金はインフレに強い資産とされる。調査では60%近くが、ウクライナ侵攻によって金の魅力が高まったと回答した。
海外に保有していた金を本国に戻す動きは、ウクライナ侵攻の制裁としてロシアの6400億ドルの金・外貨準備のほぼ半分が凍結されたことがきっかけとみられる。調査によると、「かなりの割合」の中央銀行が前例ができたことを懸念。自国で保有する割合は68%で、2020年の50%から拡大した。
ある中央銀行は「かつてはロンドンで金を保有していたが、安全資産として保有し、安全に保管するために自国に戻した」と述べた。
調査を主幹したインベスコの公的機関責任者ロッド・リングロー氏は、「自分の金は自分の国で保有する」というスタンスが昨年あたりから見られると述べた。
<分散化>
地政学的懸念を受け、中銀の間では「ドル離れ」の動きも見られる。
米債務の増加がマイナスと考える中央銀行も7%に増えた。それでも世界の基軸通貨としてドルに代わるものはないとの意見がなお大勢を占める。人民元が基軸通貨の候補になり得るとの回答は18%で昨年の29%から低下した。
今後10年間の最大のリスクについて、80%近くが地政学的緊張を挙げた。今後1年の懸念事項は83%がインフレと回答した。
資産クラスでは、インフラが最も魅力的と見なされ、特に再生可能エネルギー発電に関連したプロジェクトが注目されている。
中国に対する懸念を背景に、インドが2年連続で最も魅力的な投資国の一つに選ばれた。また製品の製造拠点を販売場所の近くに置く「ニアショアリング」がメキシコ、インドネシア、ブラジルなどを後押ししている。
英国やイタリアも投資先として魅力的ではないと見られている。金利上昇、新型コロナウイルス禍で定着した在宅勤務などの影響で、不動産は最も魅力のない資産となっている。
リングロー氏によれば、昨年運用成績が良かったSWFは、資産価格高騰がもたらすリスクを認識し、ポートフォリオの大幅な変更に積極的だった。今後もそのような対応を取るとみられる。「SWFと中銀はインフレ率の上昇に対処しようとしている。これは大きな変化だ」と同氏は述べた。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab