金1gが1万円超…どうしてこんなに値上がりしてる? 全国各地にある「金塊」の気になる今後

2023年9月1日 12時00分
 金の価格が上がり続けている。8月下旬には、国内の店頭販売価格が1グラム当たり1万円を超え、過去最高に。古来人々を魅了してきた金だが、ここまで値上がりする理由は何なのか。各地で話題になった金塊や、その持ち主は今の高騰ぶりをどう見ているのか。(岸本拓也)

◆土肥金山の金塊 制作時は約4億円→いま25億円超

土肥金山に展示されている世界最大の金塊。その時価は25億円を超えた=静岡県伊豆市で(土肥金山提供)

 「現在の価格 25億2300万円」—。先月31日、国内有数の金の採掘量を誇った「土肥金山」跡地の観光施設(静岡県伊豆市)。展示されている巨大金塊に表示された時価が、また最高値を更新した。
 重さ250キロと、世界最大のギネス記録を持つこの金塊が作られたのは2005年。当時の価格は約4億1000万円で、現在の「含み益」は21億円超ということになる。来場者が触ることもでき、夏休みの家族連れなどで連日にぎわいを見せている。
 ただ、勝呂すぐろ淳課長代理は複雑な思いも口にする。「金塊に注目が集まることはありがたい。でも、近年値上がりしているのは、コロナ禍やウクライナ戦争といった世界情勢が背景にある。手放しで喜べる話でもない」。ちなみにこの金塊は、親会社の三菱マテリアルが所有しており、売却予定はないという。

◆「安全資産」としての需要、円安、中国経済の不安定化…

 金は埋蔵量が限られ、希少価値があることから、戦争や経済危機など有事の際に、「安全資産」として買われる傾向がある。近年の値上がりは新型コロナの感染拡大や、ロシアのウクライナ侵攻で投資家の不安が高まったことが背景にある。地金大手の田中貴金属工業によると、感染拡大前の20年1月に1グラム6000円台を付けた店頭販売価格は、今年8月29日に初めて1万円を突破した。
 商品市場に詳しい楽天証券経済研究所の吉田哲さんは「金相場の高止まりに加え、最近の円安加速や、中国経済の不安定化でさらに金が買われる傾向が強まっている」と指摘する。

◆「含み益」、盗まれた、売却損出した…金塊の事情いろいろ

 金と言えば思い出すのが、竹下登内閣がバブル期に全国の自治体へ1億円をばらまいた「ふるさと創生事業」。金塊を購入する自治体が相次いだが、昨今の値上がりで、さぞ「含み益」に沸いているのか。
 岐阜県墨俣すのまた町=現・大垣市=は、1億円で天守閣形の歴史資料館「墨俣一夜城」の一部を建設し、屋根に純金のシャチホコを載せた。5分の1サイズのミニチュア版も作ったが、2002年に雌雄一対が盗まれて大騒動に。作り直した雄の腹びれも06年に再び盗難に遭った。17年にも盗難未遂事件が起きたため、展示を取りやめた。

腹びれが盗まれ、金箔の一部がはぎ取られたミニシャチホコの雄=2006年、岐阜県大垣市で

 現在は市が保管しているが、展示再開の予定はないという。売却する可能性があるか市の担当者に聞いてみると、「金価格は当時より高くなっているが、何も決まっていない」。
 同様に1億円で作った高知県中土佐町の純金カツオ像は1993年、大分県日田市の純金タイの置物は2006年に、それぞれ盗難の憂き目に遭った。1989年に純金こけしを購入した青森県黒石市は、財政危機で2007年に2億円で売却。山梨県白根町(現南アルプス市)も2003年に金塊50キロを売ったが、3000万円の「売却損」を出している。
 人々を振り回してきた金塊だが、今後の価格はどうなるのか。前出の吉田さんはこう見通す。「米国の中央銀行が利上げを続ける方針を示した一方、日銀は金融緩和を続ける方針のため、今後も円安になりやすい。中国経済への不安もあって、投資家が株の代わりに金を買う動きも強まっており、国内の小売価格は年内に1万1000円くらいに値上がりする可能性がある」

おすすめ情報

こちら特報部の新着

記事一覧