記者が見た「電気ウナギ」作戦 アマゾンで横行する金の違法採掘/上

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ブラジル当局の取締官によって火をつけられ、炎上する金の違法採掘船=ブラジル北部ジャプラ川で2023年9月12日、中村聡也撮影
ブラジル当局の取締官によって火をつけられ、炎上する金の違法採掘船=ブラジル北部ジャプラ川で2023年9月12日、中村聡也撮影

 安定資産と言われ、価格が上昇している「金」。だが、南米ブラジルの熱帯雨林アマゾンでは、金の違法採掘が横行し、自然界と人々の生活に深刻な影響をもたらしている。森林破壊に加え、懸念されているのが金を取り出す際に使われる水銀による健康被害だ。日本の四大公害病の一つ「水俣病」を危惧する声もある。9月中旬、ブラジル陸軍の摘発作戦に同行し、違法採掘の実態を探った。

朝霧に包まれた奥地をボートで

 日の出にはまだ早い午前5時、北部アマゾナス州を東西に流れるアマゾン川の支流の一つ、ジャプラ川は霧に包まれていた。軍の「前線基地」である母船からアサルトライフル(突撃銃)などを手にした兵士約30人が4隻のモーター付きボートに乗り込む。部下を指揮する中佐(44)が言った。「昨夜の巡回で4隻の違法採掘船が見つかった。これから破壊する」。視界がかすむ中、ボートは川を下流に向かって進み始めた。

 記者は、コロンビアとペルーと国境を接する地域を管轄する陸軍第16密林歩兵旅団から取材許可を得た。2000人以上が参加し、8月下旬から始まった摘発作戦の名称は「ポラケ」。アマゾンに生息するデンキウナギの名だ。ジャプラ川の前線基地までは、アマゾナス州の国境の街タバチンガから軍用ヘリコプターを2回、計4時間乗り継いで到着した。

 アマゾンで横行する金の違法採掘とブラジル陸軍の摘発作戦を追った記事は上下2本立てです。違法採掘の影響で先住民に「水俣病」の懸念が高まっている現状をリポートした下はこちらです。

 出発から30分ほど過ぎた頃、密林に挟まれた川辺に停泊する木造の船が見えてきた。違法採掘船だ。ブラジルで「ガリンペイロ」と呼ばれる採掘労働者の姿は見えない。見つかるのを恐れ、前夜のうちに逃げたとみられる。浮きがついた船…

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