北米

2024.03.12

金価格の上昇を支える中国の投資家と「トランプ復活」への懸念

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米国の景気後退の回避がほぼ確実視される中、S&P500を含む米国の株価指数は記録的水準を維持し、ビットコインのようなリスクの高い投資先も史上最高値を更新中だ。そんな中、しばしば他の市場の損失に対するヘッジとみなされる金(ゴールド)も価格を上昇させ続けている。

金の価格は、3月8日に1オンスあたり2195ドルの史上最高値を記録し、年初来では5%高、ここ1年では19%高となっている。一方でS&P500は、年初来で8%高でここ1年では31%高となっている。

直近の金の上昇の背後にある要因としては、米国以外の国の経済見通しが芳しくないことが挙げられる。国際通貨基金(IMF)は1月30日の四半期世界経済見通しで、米国の今年の経済成長率を2.1%と予測したが、ドイツや日本、英国などの他の先進国の予測成長率は1%を下回っている。一方、ここ1年の海外の主要な取引所の株価指数は、香港のハンセン指数が18%安、英国のFTSE100が1%安と、S&P500を大きく下回っている。

 Metals Dailyのロス・ノーマンCEOは「直近の金の上昇の背後に欧米の投資家はいない」と指摘し、中国の商業不動産危機の中でヘッジを求める中国の投資家からの「驚異的な需要」が、この上昇の原因だと述べている。

また、米国においては他のいくつかの要因が金の高騰の原因とされており、予想以上のインフレの可能性に賭ける方法を探す投資家や、株価の急騰にともなうポートフォリオの再配置を行う投資家の存在が挙げられる。さらに、イスラエルとハマスの戦争やロシアとウクライナの戦争といった地政学的なリスクや、11月の大統領選を前にした投資家が、安全資産としての金を求めているとの見方もある。

一方で金利の引き下げによって、もう1つの安全資産である米国債の魅力も低下する。UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのソリタ・マルセリは、8日の顧客向けメモの中で、世界の中央銀行による50年来の高水準の金の積み増しと、共和党の大統領候補であるドナルド・トランプが米中間の緊張を高める可能性も、金に対する強気を維持する理由だと指摘した。

UBSによると、1月の金の出荷の約半分は香港と中国本土向けだった。

投資対象としての金の人気は、何世紀にもわたり世界中のインフレや紛争期を乗り越えて価値を維持してきたその歴史が証明している。米国の投資家の貴金属への信頼は昨年、2012年以来の高水準を記録し、ギャラップ社の世論調査では、米国民は株式よりも金への投資に自信を持っていることが示されていた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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