[WGC東京発レポート] 金投資は通貨分散に有効
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金とドルは逆相関の関係にあり、金を一つの外貨としてポートフォリオに組み入れることは、日本の投資家のみならず、世界の投資家にとっての通貨分散の手段として有効であることが、ワールド ゴールド カウンシルの最新の分析により明らかになりました。
この内容は、「日本の投資家からみた為替リスクと金投資の役割」と題されたレポートとして発表されました。ワールド ゴールド カウンシルは、金の持つ通貨としての側面に焦点をあて、為替リスク管理における金投資の役割を論じています。
近年、金融市場および世界経済に対する信頼を回復させるため、先進各国で金融緩和策が取られてきました。それにより、国の信用を裏付けとして発行される通貨の量は急速に増え、貨幣への信頼度が相対的に低下している懸念があります。1973年の変動相場制以降のドル円レートの歴史を振り返ると、長期的円高の背景には、日本の貿易黒字と米国の貿易赤字、両国間のインフレ率格差という構造的要因が存在していました。しかし今これらの構造的要因に変化の兆候が表れています。昨年秋以降新政権への期待を背景に長期の円高傾向に終止符が打たれたかに思われるものの、同時に為替市場の変動が増加しました。このような変化の中、為替リスクの管理は、日本の機関投資家にとってますます重要なリスク管理項目のひとつとなってきました。
レポートの主な論点は、次の2点です。
- 五分位分析および相関分析により、ドルの主要通貨に対するリターン(円、ユーロ、英ポンド、スイスフラン、豪ドル、加ドル)と金価格のリターンは、分析期間(1971年1月から2013年3月)およびそのサブ期間(金価格混乱期、金価格低迷期、金価格上昇期)すべてにおいて、逆の動きをすることが明らかになりました。すなわち、ドルが対主要通貨に対して弱くなる局面では金価格は上昇し、逆にドルが強くなる局面では金は下落することが確認されたのです。このことは、日本人投資家を含む世界の投資家にとり、金が基軸通貨ドルのヘッジとして有効であることを示唆しています。
- 通貨分散の手段としての金投資の効果を確認するため、日本の企業年金を想定したシミュレーションを行いました。具体的には、米ドル60%、ユーロ30%、ポンド10%の外貨エクスポージャーポートフォリオと、金5%、米ドル55%、ユーロ30%、ポンド10%のポートフォリオの、1971年1月から2013年3月までのリスク・リターンを比較しました。その結果、金を加えることで、リスク・リターンが改善することが分かりました。
ワールド ゴールド カウンシルの日本代表を務める森田隆大は以下のように述べています。
「企業年金が保有する海外資産比率は平均で30%近くに達し、また外貨の中ではドルの占める比率が高いことを考慮すると、日本の機関投資家にとって為替リスクはますます重要なリスク管理項目のひとつとなっています。通貨リスク管理の新たな方法として、みなし通貨である金を通貨分散として組み入れることはひとつの選択肢となるでしょう。リスク管理における金の役割を評価し、近年日本の機関投資家は金投資の検討を始めています。また、新興国の中央銀行も近年金の保有を大きく増やしています。これは従来ドルに偏重していいた外貨準備ポートフォリオ内の分散を目的としたものです。」
このレポートは、ワールド ゴールド カウンシルによる日本の機関投資家向けレポートシリーズの第5弾にあたります。
ワールド ゴールド カウンシルの分析レポート(日本語版)はhttp://www.gold.org/investment/research/ にてご覧いただけます。
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