ゴールドコラム & 特集

Vol.8-変われることこそ、銀箔の最大の魅力

新光箔の純金色(じゅんきんしょく)。銀箔に色づけしたもの。金箔じゃありませんから!

金箔以外で知っている箔は? と聞かれたならば、我社の社員なら「純金プラチナ箔」だの「真鍮箔」だの「錫箔」だの、競うようにして羅列することでしょう。そんな少数派はさておき、ほとんどの方は「銀箔」とお答えになると思います。オリンピックのメダルは金・銀・銅、金木犀と銀木犀、きんさんとぎんさん…とにかく、金といえば銀。今回は、「銀箔」がテーマです。

前回も申し上げましたが、箔にはそれぞれ特長、すなわちその箔ならではの‘よいところ’があります。では「銀箔」のそれは何でしょうか?


赤貝箔。銀箔を燻すことで、色づけではなく、銀そのものの色を変化させたもの。なんてお洒落な色なのでしょう。

金が太陽なら銀は月。太陽のような金はそれ自体が華やかな存在ですが、銀は月のように静かな光で、自身が強く主張することなく相手を引き立たせる名脇役といえます。それは箔という姿になっても同じです。

また、銀箔はさまざまな色に変身することができます。色とりどりカラフルな新光箔は純銀箔に色づけしたものです。マーブル模様がついた虹彩箔というものもあります。金箔に色づけしたのでは、ベースの黄金色が主張して発色がよくないでしょうし、金箔の主張を抑えてまで色づけすることに意味はないと思われます。きれいに色づけできること、これは銀箔の大きな特長のひとつです。


我社の玄関正面に飾ってある、さまざまな箔が入った額。銀箔がじわじわと長い時間をかけながら、渋く魅力ある変化を遂げているところ。

さて、何事も長所があれば短所がある、銀箔とて同じです。銀・銀箔についていえば、‘色変わり’でしょうか。‘色変わり’がわからない方は、シルバーのアクセサリーをその辺にほったらかしにしておくと、季節が変わる頃には見ることができるでしょう。そこまで待てない人は、硫黄の温泉に浸けてみるとよいかもしれません。決しておすすめはしませんが。

それにしても、色変わりってそんなに悪いことでしょうか。確かに、すっきりとしたあの白い光を作品に活かしたいのに、月日が経つにつれて変わってしまうなんて! ということもあるでしょう。でも、それが銀・銀箔というものの特性です。その特性を活かし、燻して色変わりさせた銀箔(青貝箔・赤貝箔・黒箔)もあります。どうしても色変わりが受け入れられない場合は、空気にふれないようにしっかりコーティングするとか、あるいは銀箔にこだわらずに、例えばプラチナ箔やアルミ箔の使用を検討するとよいと思います。

箔の職人に銀箔の魅力を聞いてみたところ、「燻し銀の魅力やね」という答えが返ってきました。つまり、時が経つにつれて変化する銀箔の個性を、味わい深いものとしてみているのです。‘変わってしまう’ではなく‘変わることができる’、長所と短所は表裏一体。

そういえば…金箔があまりに目立つために忘れがちですが、金沢の銀箔の生産高は、全国シェア100%! つまり、今や金沢でしかつくられていないわけです。金沢の自慢ですねー

でしゃばらずに相手を引き立て、状況に応じて自分を変えながらも、個性は無くさない銀箔さん…サウイウモノニ ワタシハナリタイ。


箔座

プロフィール

箔座

HAKUZA

世界に誇る伝統の技を残し、世界遺産となった中尊寺金色堂など重要文化財の金箔を手がける。2002年、「純金プラチナ箔」(特許取得)を開発。箔本来の力と美しさを「箔品」として表現し、「箔座本店」をはじめとする石川県金沢市の直営店のほか、東京日本橋で旗艦店「箔座日本橋」を展開。

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