Vol.28-金箔の、実は○○なんです話
金箔業界では当たり前のことですが、一般にはあまり知られていないことがたくさんあります。知られていない、というより、思ってもみなかった、といったところです。お客様や、取材を希望されるメディアの方にお伝えして「えっ! そうなんですか?」「知らなかったなあ?」といった反応をいただくと、内心「ふふっ」と得意に思ったりします。
今回は、それらの中から特に反響が大きくて、その反応にこちらが「へえ?」と思わされる「実は○○なんです」を2つご紹介します。
●実は、金箔の製造は分業制なんです。
一口に「金箔の職人」と言っても、金箔が出来上がるまでに3種類の職人が関わっています。まず、金と銀や銅などを熔かして金合金をつくるところから、1千分の1ミリの薄さの「上澄」にするまでを手がける職人(1)。上澄を1万分の1ミリの薄さの「金箔」にまで打ち上げる職人(2)。そして打ち上がった金箔を一枚ずつ四角に切り揃えて仕上げる「箔移し」の職人(3)。
これらをすべて1人の職人が手掛けていると思われている方が、圧倒的に多いです。
金箔とは、プロフェッショナルからプロフェッショナルに引き継がれてようやく出来上がる、職人技を結集した賜物なのです。
この分業制は、明治以前、つまり江戸時代にはすでに行われていたとのことです。製法において江戸時代と異なるところは、打つのが手ではなく機械になったということだけといいますが、制度も含めて昔ながらの伝統です。
●実は、今や日本の金箔の99%が金沢産なんです。
周知の事実と思いきや、これもいまだに新鮮な反応をいただきます。
日本の製箔技術は元々は京都から、といわれています。加賀藩の祖・前田利家の時代にはすでに石川県で金箔がつくられていたそうですが、幕府による統制があった頃は、箔の製造は江戸と京都の箔屋以外には許されていませんでした。
しかし、そこは今や「工芸王国」と称される石川県金沢市。前田家は代々、文化振興策によって幕府の警戒から藩を守り、さまざまな伝統工芸の技を手厚く保護してきました。美術工芸品に金箔は欠かせないもの。つまり、金箔が必要とされる土壌だったのです。
また、統制下にあって、充分な材料がないなかで密造をする時期もあり、経験と工夫を積み重ねた結果、製箔技術が磨かれてゆきました。
そして、箔打ちに欠かせない箔打ち紙の仕込みに、金沢の水質がたいへん良質で適していたことは外せないポイントです。
そういったさまざまな要因があったところに倒幕とともに統制がなくなり、一気に金沢箔が台頭し、現在に至ります。
今やほとんど金沢でしか金箔がつくられていないということは・・・あぶらとり紙で金箔打紙として使われた「ふるや紙」や、金箔打ちの技を活かしてつくられているあぶらとり紙であれば、ほぼ金沢産ということになりますね。
トリビア的なことを知っていると、どうも自慢したくなるものです。
でも、この「1分でわかる金箔」で少しずつ公表していっているので、悦に入ることもやがてできなくなるかも知れません。いえいえ、まだまだいっぱい持っていますよ、私は! というより、金箔の世界はとにかく奥深いので、尽きることはありません。
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