Vol.29-あるようでなかった、新しい価値 <純金プラチナ箔>
金100%でつくられる24Kの金箔もありますが、それ以外の金箔は通常、銀と銅が合金されています。銀が少ないほどに赤みを帯び、増すにしたがって青みがかった金箔になります。従来のこれらの金箔の合金配合率は昔から金箔業界全体で決められており、例えば、純金箔四号色といえば、A社もB社もわが社も純金94.438%、純銀4.901%、純銅0.661%の合金配合率です。
従来の金箔に加え、どの金箔メーカーにも、A社にもB社にもない金箔が、箔座にはあります。それは金とプラチナという、金属界のツートップを合金した金箔「純金プラチナ箔」。金とプラチナの合金は、アクセサリーの分野では存在していましたが、金箔の分野では世界で初めての試みです。
当初、金とプラチナの融点の差の大きさ(*1)から合金・製箔は困難と思われましたが、2002年8月、試行錯誤を繰り返してようやく世界初の金箔が誕生しました。
すでに金箔もプラチナ箔もあったので、今となっては「なぜ誰もつくらなかったのだろう」とも思いますが、灯台下暗し、そのような発想に至らなかったのですね。もしくは、融点の違いのために考えるにも至らなかったのかもしれません。
「純金プラチナ箔」には、金99%、プラチナ1%の「永遠色(とわいろ)」と、金92%、プラチナ8%の「久遠色(くおんいろ)」の2種類があります。プラチナ1%、8%の違いにより、それぞれ、これまでにない絶妙な色、艶、質感が特長です。アクセサリーやバッグなどのファッションアイテム、器など箔座ブランドのオリジナル商品に活かされ、ほかにはない魅力でご好評をいただいています。
しかし、「純金プラチナ箔」のもつ魅力は見た目だけではありません。屋外での活用においても新しい価値をもった存在です。
従来の金箔は、これまで屋外に使用してもほとんど変色は見られませんでした。しかし、昨今の環境の変化によるためか、変色が懸念されるようになってきました。箔自体ではなく、接着剤やコーティング剤、表面の付着物などの変質によるものとも考えられますが、金箔にも変色の原因と考えられる物質、銀と銅が含まれていることは事実です。それらが直接影響しているとは断言できませんが、金箔メーカーとしてその可能性が考えられるものを一切取り除いた箔の必要性を感じていたのです。
2004年にオープンした箔座ひかり藏の「黄金の蔵」は、外壁を「純金プラチナ箔 永遠色」で仕上げた、文字通り黄金に輝く蔵です。金箔がもつ力や表情をありのまま見ていただきたいという思いもあり、コーティングを施していません。しかも吹きさらし。雨風に耐えてはや9年。
剥がれることなくなく今日も燦然と輝き、「純金プラチナ箔」の屋外での可能性を実証し続けています。
伝統は進化していくことで残っていく、と言われます。
これまでの伝統のなかに、“あるようでなかった、新しい価値”のヒントがきっとあるはず。常に進化し続けようとする伝統技術や伝統文化の分野ほど、未来志向のエネルギーに満ちあふれているところはないのかも!
*1 金の融点…1064℃ プラチナの融点…1768℃