Vol.3-金箔はどのようにしてつくられているの?
その薄さおよそ10,000分の1mmという超デリケートな金箔は、どのようにしてつくられているかご存知でしょうか。今回は金箔の伝統的な製造工程をご説明いたします。…と、その前にクイズです。
もしも箔の職人の家が火事になったら、職人は避難する際にどちらを持ち出すでしょうか。
A:金 B:箔打ち紙(*当然紙でできています)
答えは最後にお教えいたします。
話を元に戻して、金箔の製造工程にまいりましょう。金をいきなり叩いて薄くするのではなく、まずはおよそ1/1,000mm?2/1,000mm厚の「上澄(うわずみ)」というものをつくります。
金を銀と銅の地金とともに溶解し、型に流し込んで金合金を作ります。見た目金の延べ棒のようなその金合金を、今度はロール圧延機で厚さおよそ5/100mm?6/100mmの帯状に延ばします。帯状の金合金を約6?にカットし、束になった澄打ち紙の間に挟み入れ、打ち延ばします。ここで一気に薄くしてしまうのかと思いきや!別の打ち紙に移し変えて打ち延ばすことを繰り返して、およそ1/1,000mm?2/1,000mmの薄さにします。最後に型を当てて縁を切り揃えて完成です。
ここまでは上澄の職人が手掛けます。残念ながら意外と知られていない上澄の存在…しかし美しい箔は、美しい上澄があってこそ。それに、熱を加えてつくられるガラス製品や陶磁器に箔は薄すぎるため、多くは上澄が使われます。
これ以降は箔の職人が手掛けます。上澄を12?16くらいの小片にカットし、この小片を小間紙という打ち紙に挟み入れ、通常1,800枚を一束にして革に包んで打ち延ばします。それを今度は‘まま紙(箔打ち紙)’に移し変えて、およそ1/10,000mm?2/10,000mmにまで打ち延ばします。打ち延ばされた箔は一枚ずつ革板の上で竹枠をあてて裁断します。裁断されたものは一枚ごとに和紙を間に挟み、100枚ごとに糸で束ねて仕上がりとなります。
ざっとご説明するとこのような流れになっており、細かい作業を重ねて少しずつ薄く延ばしていくわけです。
では、先ほどのクイズの答えです。正解はB。なぜならば、箔職人が手掛ける工程において最も重要なものは箔打ち紙の仕込みと言われます。手漉きの雁皮紙を水や藁の灰汁・柿渋・卵白などを用い、手間暇をかけ、丹精して箔打ち紙に育て上げます。打ち紙の良し悪しが箔の仕上がりを左右するため、打ち紙の仕込みができるようになって初めて一人前の職人と言われます。先ほど出てきた‘まま紙’は、これでご飯が食べられる(稼げる)というところからきているそうです。手塩にかけて育てた大事な箔打ち紙が燃えてしまうと箔は打てません。それに対して金は火の中にあっても最後には残るから、だそうです…「ええっ 金は高価なものなのに!」と普通は思いますよね。ちょっと大げさな例えではありますが、そのくらい箔打ち紙は職人にとって、金箔にとって大切なものということ。実際にそんなことになったら、紙より何より真っ先に逃げていただかないと困りますよ!
そうそう、この職人の大事な箔打ち紙は、後に‘ふるや紙’というあぶらとり紙になります。箔打ちの次はあぶらとり。最後の最後まで働き者の‘まま紙’です。