ゴールドコラム & 特集

Vol.5-金箔づくりの道具

金箔づくりは、金沢で約400年の歴史を誇っていますが、その製造工程は、基本的にずーっと昔から同じです。変わったこといえば、打ち延ばす際にハンマーで手打ちをしていたのが、大正の頃に箔打ち機が完成して以来、今では全て機械打ちになったこと。それ以外はほとんど変わりがありません。
道具も同じです。箔職人の仕事場をのぞいてみると、驚くほどアナログなものばかり。それらの材質は、竹、紙、木が主。そしていたってシンプルな形状です。

仕事をする作業台や、箔打ち紙を揃える際に使う道具、箔のくずなどを入れる箱などは、木でつくられています。
道具というのと少し違いますが、紙でできているものの代表は箔打ち紙。これは、前号でもびっしりと書かせていただきましたので今回は割愛。


手前から箔用の箸、澄用の箸、天狗爪、箔を裁断するための竹枠と革板


ぴんっと張った金箔を、そおっと箸を入れて取り出す


引き出しに道具を入れ、天板では箔移しなどを行う作業台


それ以外の道具でよく見かけるのが竹製のもの。ただでさえ気難しいところのある金箔。 静電気があると思うように扱うことができません。ですから、金箔を扱う際に使う道具類も静電気を帯びないものでなくてはなりません。金箔を直接つまんだりあしらったりする箔箸は竹製です。なぜだか、竹の道具は静電気を帯びないのです。箔箸をつくる際、表面を滑らかにするためによく磨きます。表面をよく擦るわけですから、普通なら静電気がお きそうなものなのに、まったく帯びていないのだとか。
職人は、金箔の状態に応じて箸を使い分けています。まだ厚みのある澄を扱う時に使う箸は、先がやや丸みを帯びているもの。打ち上がった薄い金箔を扱う時は、全体にさらに細 くて先が鋭角になっている箸を使います。この箸は驚くほどしなやかに曲がり、箔打ち紙 と箔の間にスーッと無理なく入り込むことができます。
そして、箔を一枚ずつ裁断する時に使う枠も竹製。いずれも竹製ですが、道具それぞれに竹の種類は異なるそうです。

恐れ多くて職人の箔箸に触れるなんてことはできませんが、もしそんな機会に恵まれたら、持ち手以外の部分は触らないように。とくに先端は手づかみ厳禁!手の脂が道具についていると、そこに金箔が付いてしまいます。
道具でさえダメなのだから、金箔に直接手指で触れられないのは当然のこと。でも、職人 の手元を見ていると、あれ?指で箔を触っている…よく見ると指先には何やら魔女の指のようなものが!これは天狗爪(てんぐのつめ)といい、不要な箔打ち紙をくるりと巻いてつくったもの。人さし指に挿し、金箔をおさえるのに使います。

いずれも金箔づくりになくてはならない道具ですが、何でもあるこの現代、もっと便利なものがありそうだと思いませんか?それを職人に聞いてみたところ、昔からの道具よりいいものは思いつかないとのことでした。それは、材質といい形状といい理にかなったものだから。そういう職人の言葉の中には、先人たちへの敬意が感じられました。

職人の言葉を聞き、今私たちの目の前にある金箔が歴史と伝統の技の賜物であることをしみじみと思います。我社の古くからある作業場で金箔を見ていると、その思いは一層強くなるのでした。何ぶん、年季が入って雰囲気たっぷりの作業場なものですから…


箔座

プロフィール

箔座

HAKUZA

世界に誇る伝統の技を残し、世界遺産となった中尊寺金色堂など重要文化財の金箔を手がける。2002年、「純金プラチナ箔」(特許取得)を開発。箔本来の力と美しさを「箔品」として表現し、「箔座本店」をはじめとする石川県金沢市の直営店のほか、東京日本橋で旗艦店「箔座日本橋」を展開。

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