Vol.6-親の意見と茄子と金の共通点!?
箔座本店に、純金1kgの金の延べ棒が展示してあります。(ちなみにセキュリティの 問題上、ダミーですから驚かないでください。)それをご覧になった方がよくお尋ねになる質問があります。
「この1kgの金塊から、金箔は何枚できるの?」
皆さん、黄金の茶室をご覧になった後ですので、気のせいか興奮気味にお聞きになります。
では、その答えは…
あくまでも目安ですが… 金箔1枚を約0.025g(*)とします。とすると、計算上で は、1,000g(1kg)÷約0.025g=約40,000枚となります。し・か・し! 約40,000枚とお答えするのはまだ早いのであります。
なぜか?お 客様からの質問をよく聞いてください。「?何枚できるの?」です。「?何枚に換算されるの?」ではないのです。
「?何枚できるの?」の答えは、約20,000枚です。 えーっ、なぜなの?
金箔づくりは、ロスが多いのです。製造工程のあらゆる段階において金のロスが出るのですが、最も顕著なのは箔の仕上げの段階。打ち上がった箔は一枚ずつ革板の上で竹枠をあてて所定の寸法に裁断されます。これが結構大きいのです。金箔の製造工程については、Vol.3 をご参照くださいね。
例え1kgの金を使っても、実際に金箔としてでき上がるのはその半分くらいになるのです。ただし、この半分という量は一概には言えないので、先ほどの約20,000枚という数値もあくまでも計算上のものとなります。
では、箔になれなかった残りの金は今頃どうしているのでしょうか。
大丈夫、金は再生できるのです。材料を追加して、溶解してまた箔づくりに使われますのでご安心を。
また、箔の縁は、そのまま「切廻し」とい う立派な箔素材として活躍いたします。「切廻し」は、彫りものなど凹凸(おう とつ)のあるものへの箔押しに適していますし、化粧品に配合したり食用金箔として活 用されたりと引っ張りだこ。「親の意見と茄子(なすび)の花は千に一つの無駄もなし」、 金のことも追加してほしいものです。
*…「金箔縁付4号色 3寸6分角(約10.9cm角)」を基準に、あらゆる要素から割り出さ れたものです。箔の種類などによって異なり、絶対値ではありません。また、微量の銀と銅が配合されていますが、今回は合金配合率については、複雑になるので考えないこととしました。