Vol.6-自然からのデザイン 古代ケルト民族のジュエリー
■古代ケルトと精霊たち
古代ケルト民族は、大陸の鉄器文明に源を持つことからか、多くの優れた金属装飾品(ケルトジュエリー)を現在に残しています。
そんな彼らが信仰したのは、森羅万象に精霊が宿るとする多神教。輪廻転生を信じ、樹木、山、泉、動物など、さまざまな自然の中に「命の根源」を感じていました。そして、「神の宿る自然界の森羅万象」を装飾品のモチーフとして大胆に採り入れ、これが後のケルトジュエリー独特のデザインとして結実していった、とも言われています。
■独自の文化をつくりあげたドルイド
古代ケルト民族の宗教は、樫の木の賢者を意味する「ドルイド」という修行僧によって受け継がれました。
ドルイドは多くの物語や詩、歌を暗唱できる高い能力を身につけており、この能力は、深い瞑想により自然と一体化する修行によって培われたとされています。
また、古代ケルトには文字が存在しなかったため、口承の文化が発達しました。ドルイドは政治や裁判などを司るなど、さまざまな役割を担っていました。やがて、時代とともに天文や神話、民話を伝えるなどドルイドのなかから各分野のエキスパートが育っていったのです。一人前のドルイドになるためには20年以上かかったといわれています。
■神秘の鈴「ドルイドベル」
ドルイドは修行を通じて「ドルイドベル」という神秘的な鈴をつくりました。ドルイド達は森で瞑想しながら、この鈴の音色を聞くことで魔力を高めようとしたのかもしれません。
ドルイドベルの内部にはいくつもの弦があり、動かすと小さな真鍮の破片が弦にぶつかり美しい音色を奏でます。これが、のちの機械仕掛けのオルゴールに発展したともいわれています。ドルイドベルは現在オルゴールボールとして復元され、神秘的な音色とともに古代ケルト民族の自然観をいまに伝えています。