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金価格下落も、供給量の抑制が価格を下支え

機関投資家のための運用情報誌「オル・イン」Vol29 Autumn,2013(2013年9月)号より。

■中国・インドの底堅い現物需要

 ワールド ゴールド カウンシルの「ゴールド・デマンド・トレンド 2013年第2四半期」号が発行され、2013年4?6月期の金需要統計が明らかになった。金価格は3カ月間で約25%下落し、金市場にとっては激動の四半期であったが、一方で金価格の下落がインド・中国を中心とする世界の消費者の現物需要を喚起したことも、改めて示された。

 同四半期の世界の金需要は856.3トン(金額ベースで390億米ドル)で、前年同期比12%の減少となった。その内訳は、宝飾品分野での需要が575.5トン、金地金・金貨およびETFを含む投資分野での需要は105.4トン、半導体や歯科への利用を含むテクノロジー分野での需要が104.3トン、世界の中央銀行からの需要が71.1トンであった。

 宝飾品需要は前年同期比37%増となり、数年来の高水準を記録。また金地金・金貨への投資額は、四半期ベースでは初めて500トンを超えて過去最高に達し、前年同期比では78%の増加となった。特にインドと中国では、それぞれ116%、157%増加し、金価格の下落を背景とした底堅い需要の構図が明らかになった(図表1)。



 一方、ETFからの需要は402.2トン(金額ベースで183億米ドル)の減少となった。ヘッジファンドや一部投資家が大量に売却したことによるETFからの資金流出は金価格下落の主要な要因となったが、宝飾品需要や金地金・金貨への投資需要増で全体の需給は相殺された。世界の中央銀行による純購入額は、ここ数四半期の水準には及ばなかったものの、10四半期連続での買い越しとなった。

 金市場への参加目的は投資家ごとにさまざまであり、金のニーズも世界各国で多種多様である。そのため、ある分野の需要増加が別の分野での需要減少を相殺するという金市場独特の自律的均衡作用が、顕著に表れた四半期だったといえる。

■価格下落によって供給量も抑制

 4?6月期の金の供給量は、リサイクルの減少により前年比6%減の1025.5トンとなった。

 金の主な供給源には、金鉱山からの新たな産出と、リサイクルによる市場への流入の2つがある。農作物や石油など他のコモディティとは異なり、金は消費され消滅することがなく、また腐食しないためリサイクルが可能で、リサイクルによる供給は金の需給構造の大きな特徴となっている。

 鉱山から産出される新規の金生産量は、2011年2839トン、2012年2863トン、2013年は1?6月で1408.7トンとなっており、比較的安定的に推移している。


 一方、リサイクルの動向を左右する要因は複数考えられるが、金価格はその大きな要因のひとつである。同四半期のリサイクルによる金の供給量は308.3トンで、金価格の下落を反映して前年同期比25%の減少となった。

 また、金価格が2年以上連続して下落し、累積下落幅が10%以上となった期間におけるリサイクルによる金供給額(米ドルベース)を見ても(図表2)、金価格下落局面ではリサイクル量が減少する傾向が表れている。リサイクル可能という金独特の供給構造が、金価格の下落(上昇)時には供給量が抑制される(増加する)という、自律的均衡作用をもたらしているのだ。

(注)「ゴールド・デマンド・トレンド」の詳細 http://www.gold.org/investment/research/regular_reports/gold_demand_trends/gold_demand_trends_japanese/
【記事・データ協力:ワールド ゴールド カウンシル
ワールド ゴールド カウンシルは、金市場の育成を目的とする組織です。投資、宝飾、テクノロジー、政府関連分野において金需要を喚起するため活動しています。世界の主要金鉱山会社をメンバーとし、英国本部、日本、インド、中国、米国などにオフィスを有します。

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