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ETFによる投機的需要の減少を現物需要が下支え

機関投資家のための運用情報誌「オル・イン」Vol31 Spring,2014(2014年3月)号より。

 ワールド ゴールド カウンシル発行の『ゴールド・デマンド・トレンド2013年 年間』がリリースされ、昨年の金需要統計が発表された。それによると、2013年を通じて金価格は大きく下落し、金市場にとっては激動の1年であった。全世界における金需要は2012年より15%少ない3756トンとなったが、その主な要因は、金の現物を裏付けとするETF(上場投資信託)からの資金流出によるものである。

一方で、金の宝飾品や金地金・金貨への消費者需要は旺盛で、前年比21%の増加となった。また、金の2大需要国であるインドと中国が世界の金需要の50%以上を占めている状況に変化はないが、ここ10年以上トップの座にあったインドを抜いて、2013年は中国が初めて首位となった。

ETFからの需要は881トンの減少となり、金額ベースではネットで約400億米ドルが売却されたことになる。これは、主にヘッジファンドや一部大口投資家が、市場環境の変化に対応して資金を株式等にシフトさせた影響が大きいと見られている。

金価格(ドルベース)は、1年間の平均価格ベースで15.4%の下落となったが、価格の下落は消費者の購買意欲を喚起することとなった。宝飾品への需要は、2008年の金融危機発生以来で最高となり、また金地金や金貨の購入も、1992年に統計を取り始めて以来最高となった。

 世界各国の中央銀行による純購入額は369トンで、4年連続の買い越しとなり、ロシアが77トン、カザフスタンが28トン、韓国が20トンと、それぞれ金準備を積み上げた。

インド政府は経常赤字削減のため、原油に次いで同国最大の輸入品である金に対して輸入税引き上げなどの制約を課した。こうした政府による金需要抑制策は一時的に功を奏したかに思われるが、その一方で、インド国内における金価格にはプレミアム*が上乗せされ、また非公式の輸入(すなわち密輸)が増加している(図1)。



■インド・中国における宝飾品購入意欲は旺盛

 金の宝飾品や金地金・金貨に対する消費者の需要のうち、インドと中国の2カ国が占める割合は、2013年は53%であった。インド人は伝統的に金を愛する国民であり、結婚式や宗教的祝祭時には金を購入するのが習わしとなっている。

 また中国では、金は幸運を意味し、出産や婚礼等の際に金の宝飾品を贈る伝統がある。さらに取引所の設立や、金の供給・販売に関する規制緩和が進み、現在では商業銀行が金現物の販売を行っていて、金の需要は旺盛である。

市場では中国政府による金購入量にも注目が集まっていて、今や中国は世界一の金産出国でもあるが、不足分は輸入に頼っている。

 ワールド ゴールド カウンシルは2014年1月に、中国およびインドで消費者約2000人を対象に、金に対する意識調査を行った(図2)。今後1年間で金を「さらに多く購入したい」と答えた人と「同程度に購入したい」と答えた人の割合は、インドで75%、中国で79%であった。両国の力強い金需要は今後も続きそうである。



(注)「ゴールド・デマンド・トレンド」の詳細:
http://www.gold.org/investment/research/regular_reports/gold_demand_trends/gold_demand_trends_ japanese/

* 一定の品質を持った金の価格は、世界中どこでも(時間による差異はあるものの)理論的には同一であるが、各国国内で取引される金の価格はそれぞれの事情によりプレミアムになったりディスカウントになったりする。

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