金市場でも、中国の存在感がさらに高まる
機関投資家のための運用情報誌「オル・イン」Vol32 Summer,2014(2014年6月)号より。
ワールド ゴールド カウンシル(WGC)から「ゴールド・デマンド・トレンド 2014年第1四半期」がリリースされ、今年第1四半期の金需要統計が明らかになった。
これによると今年1?3月期の金需要の合計は1075トンで、前年同期とほぼ同じ高水準を維持、金額ベースでは447億米ドルにのぼった。その内訳は、宝飾品需要が571トン、金地金・金貨の投資需要が283トン、半導体等のテクノロジー需要が99トン、中央銀行による購入が122トンとなった。
世界二大需要国の一角を占めるインドの需要が、継続する政府による金輸入制限や総選挙の影響で前年同期比26%減となった。その一方で、過去4四半期連続で資金流出だった金の現物を裏付けとするETF(上場投資信託)は、売買ネットベースでゼロとなり、売りが一段落した格好である。
一方、日本における金の需要(宝飾品、金地金・金貨の販売と買い取りのネット需要)は、8.2トン(宝飾品5.1トン、金地金3.1トン)と世界的には低い水準ではあるものの、前年同期比409%の記録的な増加となった。4月からの消費増税前の駆け込み需要が影響したものと思われる。
■需要・供給の両面で存在感増す中国
中国は今や金の世界でもトップの座にいる。中国は、世界最大の金の需要国かつ生産国である。WGCは先日、中国の金市場に関して「中国の金市場:その歩みと展望」と題するレポートを発表した。
それによると中国の金市場は、1990年代後半に自由化され、2004年には国内の商業銀行が金地金商品の販売を開始、その後急速に進む経済成長や都市化を背景に、拡大を続けている。
中国では、年収5万ドル以上の中間所得層が現在3億人いるが、2020年にはこれが5億人に増加する見込みである。金を買う余裕ができた消費者が増えることで、中国の金需要は今後も拡大を続けると予想される。
中国政府による金保有高は2013年末時点で1054トンと世界第6位である。一方、外貨準備高は3.8兆米ドルを超え、驚異的な水準に達しているが、その大半は米ドル建て債券が占めている。中国は外貨準備の分散を進めているものの、足下の金準備比率はわずか1.1%に過ぎない。
中国政府は2009年に約450トンの金準備を積み増したことを公表して以来、公式な発表を控えているが、国内の生産量、輸入量、国民による購入量から計算すると、かなりの額を中国政府が購入しているのではないかとの憶測もある。また中国政府の指導部は、緊急事態には国民が保有する金を「国の準備資産の一部」と考えているようだ。
一方で中国は、2007年以降、金の産出国としても世界第1位の座にある。かつて金の生産国として名を馳せた南アフリカ共和国は徐々に順位を落とし、2013年は世界で第6位。昨年の中国の金生産量は、437トンで世界の金生産の15%を占める。しかし中国の金鉱山の大半は小規模であり、労働コストの上昇もあり、年間400トン以上の生産を長期的に続けることは難しいのではとの声も上がっている。
ワールド・ゴールド・カウンシルの日本語レポートは以下のサイトをご参照ください。
http://www.gold.org/investment/gold-investment-research