2001年から12年間、上昇を続ける金価格。その理由は?
機関投資家のための運用情報誌「オル・イン」Vol27 Spring,2013(2013年3月)号より。
■2012年1年間の世界の金需要
昨年1年間の全世界における金の需要統計がまとまった。ワールド ゴールド カウンシルが発表した「ゴールド・デマンド・トレンド 2012年年間」によれば、2012年の世界全体での新規の金需要は、数量ベースで4405.5トンと前年比4%の減少となったものの、金額ベースでは2364億ドルと過去最高を記録した。
2012年の特徴は、宝飾品需要や金貨・金地金に対する、一般消費者からの需要が減少する一方で、金ETFによる需要の増加と48年ぶりの高水準となった中央銀行による購入である。
一般消費者の需要の多くを占める宝飾品や金貨・金地金は、全世界合計で前年比9%の減少となり、中でも世界最大の需要国であるインドの需要減少が影響した。
インドでは、2012年の前半に金の輸入税の引き上げが二度にわたり実施され、政府からの物品税導入の提案(その後撤回される)に関連する混乱、さらにインドルピー建て金価格の急騰という逆風に直面した。
しかし10?12月期に入ると、需要は堅調さを取り戻した。婚礼シーズンやディワリ祭といった季節的な要因に加え、金の輸入税の再々引き上げ観測(2013年1月に実施)に伴う駆け込み需要の増加が、その大きな要因である。
ちなみにインドの金に対する輸入税は、2012年1月から現在までの間に3度にわたって引き上げられ、1%から6%へと6倍も跳ね上がった。その背景には、同国の輸入のうち、原油(輸入金額全体の3割を占める)の次に、金(同1割)が多いことから、貿易赤字の縮小のため、政府が金輸入の抑制に動いているという事情もある。
金ETFの需要については、世界の多くの取引所に上場する金の現物拠出型ETFへ新たに投資された額は約150億ドル(279トン)で、前年比51%の増加となった。世界的に金融緩和が予想されたことが、その要因のようだ。
また、世界の中央銀行によるネットの購入額は、前年比17%増の534.6トンで、48年ぶりの高い水準となった。
2009年の第4四半期に売り越しから買い越しに転じて以来、金需給の下支え要因となっている。引き続き新興国を中心に、外貨準備における通貨分散の観点から金の保有を増やす動きが広がっているためだ。
■金のリターンは連続12年間でプラス
2012年の金価格の年間上昇率は、2001年以来12間連続でプラスとなった。表1は、その間の金の年間リターンを示したものであるが、2007?08年に発生したテールイベント、先進国を中心とした量的緩和などの不安材料を背景とし、需給面ではインド、中国の二大消費地からの旺盛な需要、新興国の中央政府の金準備の拡大、先進国の中央政府による金売却の抑制、金ETFの登場による投資家の拡大などが下支え要因となっている。
また表2は、主要通貨および主要金需要国の現地通貨ベースで見た2012年の金価格騰落率である。年末から円安が進んだことから、円建ての金価格の上昇が目立つ。
通貨ヘッジをせずに金を保有する場合には、資産クラスとしての分散効果に加えて、外貨資産と同様に円安の恩恵を受けることができる。
【記事・データ協力:ワールド ゴールド カウンシル】
ワールド ゴールド カウンシルは、金市場の育成を目的とする組織です。投資、宝飾、テクノロジー、政府関連分野において金需要を喚起するため活動しています。世界の主要金鉱山会社をメンバーとし、英国本部、日本、インド、中国、米国などにオフィスを有します。