金の購入を加速させる、 新興国の中央銀行
機関投資家のための運用情報誌「オル・イン」Vol23 Spring,2012(2012年3月)号より。
■2011年の新たな金需要は4067.1トン
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が発表した「ゴールド・デマンド・トレンド 2011年(年間)」によれば、昨年1年間の新たな金の需要は、世界全体で4067.1トンとなった。これは金額換算でおよそ2055億ドルに相当し、史上初めて2000億ドルを超えた。
金の需要は主に、宝飾品需要、産業需要、投資需要に分けられる。金価格の上昇が続く中で、宝飾品需要や産業用需要がマイナスとなった一方で、2011年の需要の牽引役を担ったのは、投資需要であり、前年比5%増(トンベース)となった。中でも金貨や金地金の購入が堅調で、全世界ベースでは24%増となり、日本を含む数カ国を除き、ほとんどの国や地域で大幅に増加した。特に中国、インドに加え、足元での混乱が続く欧州諸国で金投資が注目された。
金市場は10年間上昇を続けているが、2011年も年初より堅調に推移し、特に夏場以降の急騰で9月に1895ドル/オンス(※)をつけ、ドルベースでの最高値を更新した。その後調整したものの、2011年の年間の金価格騰落率は、8.9%(ドルベース)であり、円ベースでは円高の影響を受け3.3%となった。
■世界の中央銀行等公的部門の最新の動き
世界に現存する金のおよそ17.4%は、中央銀行等の公的部門によって保有されている。各国の中央銀行は金リザーブを外貨準備の一部として保有しているが、その保有量は、米国が圧倒的に多く、次にドイツ、IMF、イタリアと続く。また外貨準備の全体額が大きい中国や日本は、外貨準備に占める金リザーブの比率が小さい(表1)。
1990年から2000年代前半までは、先進国を中心に計画的に金の売却が行われ、公的部門は長期間にわたり金の提供者であった。しかしここ数年、その行動に大きな変化が見られる。
1990年から2008年まで、全世界の公的部門は合計で年間平均400トン近い金を売却していたが、2010年には20年ぶりに買い越しに転じ、2011年にはさらにその買い越し量が440トンへと拡大したのだ(表2)。
ネットでの買い越し額が増加したのは、多くの新興国の中央銀行が金の購入を進めている一方で、長期間金を売却していた先進国による売却額が縮小していることによるものだ。なお新興国が金を購入している背景には、特定の通貨への依存度を下げ、外貨準備の多様化を図っているという要因が考えられる。
※ロンドン地金市場協会(LBMA)のメンバーである貴金属ディーラー間で決められる金の現物取引価格の午後決め値London PMFixベース。
【記事・データ協力:ワールド ゴールド カウンシル】
ワールド ゴールド カウンシルは、金市場の育成を目的とする組織です。投資、宝飾、テクノロジー、政府関連分野において金需要を喚起するため活動しています。世界の主要金鉱山会社をメンバーとし、英国本部、日本、インド、中国、米国などにオフィスを有します。