ゴールドコラム & 特集

改めて見直される 「通貨」「資産分散」としての機能

機関投資家のための運用情報誌「オル・イン」Vol24 Summer,2012(2013年6月)号より。

■世界の約1/4を占める中国の旺盛な金需要

 ワールド・ゴールド・カウンシルが発表した「ゴールド・デマンド・トレンド 2012年第1四半期」によれば、2012年1?3月期の世界全体での金需要は、総量ベースで前年同期比5%減少し1098トンとなった。金額ベースでは16%増の597億米ドルであり、約4.8兆円の資金が金市場に新たに投入されたことになる。

 同四半期の金需要の特徴としてはまず、投資部門および宝飾品部門の双方における中国の旺盛な需要があげられる。世界需要1098トンのうち、255トン(約23%)が中国国内からの需要で、中国は2四半期連続でインドを抜いて最大の需要国となった。

 一方インドは、2度にわたる輸入税の引き上げや、金製宝飾品に対する新たな物品税の導入提案が行われたことで、宝飾品店の全国的ストライキが発生。これらが原因となり、同四半期の需要は、208トン(前年同期比29%の大幅減)にとどまった。しかしその後、インド政府は新税導入を撤回し、市場は回復を見せている。

 また、世界の中央銀行等公的部門は買い越しであり、ロシアやカザフスタン、メキシコ等の中央銀行の買いが報告されている。これは外貨準備資産の多様化をはかっていることによるものである。過去20年超にわたり売り越しを続けてきた世界の中央銀行の行動は明らかに変化しており、今後も大幅な買い越しが継続するものと思われる。

■ポートフォリオにおけるリスク分散効果

 金には他の資産にはないさまざまな特有性が存在する。宝飾品やコモディティとしての顔はもちろん、通貨・貨幣として金は通貨分散機能や担保機能を有しているほか、信用リスクが存在しないため、富を保全する資産の中核としての機能も持っている。世界的な金の用途別需要からも、宝飾品の割合が減少する一方で、投資の割合が増加する傾向が見られ、金の投資としての役割が注目されている。

 機関投資家がポートフォリオのリスクを低下させたり安定させるには、何よりも“分散”が大切である。表1に示すように、金は伝統的な資産との相関が低くベータ分散のツールとして有効である。またボラティリティの面でも、株式やコモディティ全体を含む指数と比較しても、決して高くはない(表2)。



 金のエクスポージャーを持つには、以前は金の現物(金貨や金地金など)を購入するか、あるいは先物を利用するしかなかった。しかし金の現物を裏付けとするETFが開発・組成されて以来、数多くのETFが世界のさまざまな市場に上場され、その合計は今年4月末現在で時価総額にして約1260.8億ドルに達している。日本においてもいくつかの運用機関によって、ETFを通じて金に投資をする年金基金向けの運用商品が提供され始めている。

【記事・データ協力:ワールド ゴールド カウンシル
ワールド ゴールド カウンシルは、金市場の育成を目的とする組織です。投資、宝飾、テクノロジー、政府関連分野において金需要を喚起するため活動しています。世界の主要金鉱山会社をメンバーとし、英国本部、日本、インド、中国、米国などにオフィスを有します。

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オル・イン(for All Institutional Investors)は、ヘッジファンドやプライベートエクイティ、不動産といったオルタナティブ投資はもちろん、株式・債券の伝統的運用もカバーする、機関投資家向けの「総合運用情報誌」です。年4回(3月、6月、9月、12月)発行。

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