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[番外編]鉱山をゆく―国内最大のセリサイト埋蔵をほこる土橋鉱山(後編)

>>[番外編]鉱山をゆく?国内最大のセリサイト埋蔵をほこる土橋鉱山(前編)はこちら

前編では大坑道入口から採掘現場に至るまでをご紹介しましたが、後編では実際の採掘の流れから、重機、坑外風景、そしてこの鉱山で採れる鉱石などについてご案内いたします。取材当日に見れなかった部分については、土橋鉱山様より写真等を提供頂きました。



■原鉱石の採掘から選別、粉砕、出荷まで


(1)ボーリングによる調査

(2)岩盤への穿孔

鉱体の賦存状況を知り、今後の採鉱計画を立案するために実施。写真は先進ボーリングの作業光景。ボーリングで得たコアは、一定の間隔で試験を行い、品質管理のため、大切に保存します。

クローラードリルを使用し、坑道の大きさや岩質に応じ、方向・長さ・間隔などを考慮しながら、爆薬を装填する孔を20?50程度穿孔。孔に電気雷管と爆薬を装填、1回の発破で約25キロの爆薬を使用します。



(3)発破による起砕

(4)原鉱ピットで仕分け

慎重に爆薬の装填、周辺の安全を確認した後に、発破器に接続し爆破。坑内作業でもっとも緊張する瞬間。火薬類は、坑外に設置された火薬庫から1日分を取り分け、坑内の火薬類取扱所に一時保管。

抜鉱口から4トンダンプに積み込まれ、地上へと運ばれます。原鉱ピットでは更に、品種・品質・品位を分けて貯鉱します。尚、坑道は幅4.5メートル、高さ3.8メートル。坑内温度は年中17度程度と安定しています。



(5)粉砕作業と分析

(6)トラックに積み込み出荷

原鉱の粉砕を行います。およそ7割の製品は10mm以下に粉砕。サンプリング品は、X線解析、白色度、イグロス測定などを行います。測定は社内の試験室にて。尚、成分分析、耐火度等は岡山県セラミックセンターに依頼。

粉砕された製品は、それぞれの品質・品位ごとに決められた出荷ピットへ。トラック、あるいは片上港から船に積載され、各ユーザー様のもとに届けられます。ピットは、330トン3基、230トン9基、150トン8基、他6基を設置。




■坑内外で活躍する愛しき重機たち


ここからは坑内の風景や、重機の写真などを色々とご紹介。まずは坑内専用の積込機械で、キャタピラー社のホイールローダ。


そしてこちらは浮石の除去作業を行う機械で、ショベルに油圧ブレーカーを取り付けたコマツの小型パワーショベルPC35 MR-3。


前編でも出て来ましたが、こちらは岩盤に対し爆薬を装填する孔を穿孔するクローラードリル、ヤマモトR・M HCD-101。


坑外に場所を移し、こちらは坑内から出鉱された大きな原鉱を割る重機、KOMATSU PC90(ブレーカーNPK H-4X)。



そして、最後は重機ではないのですが、これ、何かわかりますか?超有名なアニメ映画の冒頭でも出てくるアレです。


ここは「巻室」で、立坑のエレベーターを上下させるための機械室となり、現在は主に、立坑を経由している坑水・電気関係の点検に使用しています(Level1・2)。斜坑道が出来るまでは、資材・人員・鉱石と、搬入・搬出はすべて立坑を利用していました。 

そう、これはあの「ラピュタ」の冒頭でパズーが親方に操作を任されたあのエレベータの機械と同じ。手前の椅子に座り、大きなレバーの操作により動かします。


■土橋鉱山で採れる鉱石とは


土橋鉱山では、精製セリサイト、陶石(セリサイト系)、ろう石(パイロフィライト系)、珪石などの鉱石が掘り出されます。これらの鉱石は、高級食器や衛生陶器、クレーなどの各種工業製品使われています。以下、簡単にそれぞれの鉱石の説明します。



精製セリサイト

セリサイトは別名「絹雲母」とも呼ばれているように、原鉱は絹色の光沢を持っています。精製した粉末は白色無臭(L値90以上)で、化粧品などのベースとしても使用されます。土橋鉱山の製品は、主に高級食器などに利用されています。土橋鉱山では水分が30%以下、平均粒径が5μ以下の水簸(すいひ)したものを精製セリサイトと言っています。

陶石(セリサイト系)

陶石は、食器や陶器などの原料として出荷されます。耐火性の面だけでなく、陶器として焼いた際の透き通った白色に特徴があることから、製品の品質を決める重要な原料の1つとして位置づけられています。

ろう石(パイロフェライト系)

ろう石を微粒化したものをクレーと呼びます。クレーの用途は実に多彩です。身近なところでは、雑誌に使われる紙の表面をコーティングする塗工剤として使われています。また、高熱に耐える磁器の原料としても利用されます。

珪石

珪石とは、石英を主体とした珪化物の鉱石です。主な用途は、コンクリートやタイルなど建設資材の原料です。また、農薬用キャリア(農薬をコーティングする芯材)にも利用されます。備前地区では採掘出来る鉱山が土橋鉱山のみとなりつつある鉱石です。

■取材を終えて

初の鉱山取材となった今回、しかも現役鉱山ということで取材チームは興奮しきりでした。取材に際し、土橋鉱山様にはとても良くしていただきました。本当に有難うございます。この場を借りて御礼申し上げます。また時を改めて是非再訪したいと思っております。最後にこの取材の中でのベストショットで締めたいと思います。


今回の取材におけるベストショット・筆者は左


■周辺名所のご案内

最後は番外の番外ということで周辺のご案内も少し。土橋鉱山から車で約10分程度のところに、特別史跡「閑谷学校」があります。江戸時代に建てられた、旧岡山藩直営の庶民教育のための学校で国宝の講堂をはじめ、聖廟や閑谷神社などほとんどの建造物が国の重要文化財に指定されています。


特別史跡 閑谷学校の講堂(国宝)

特別史跡 閑谷学校の講堂(国宝)

また瀬戸内の猟師町・日生(ひなせ)まで下りれば、新鮮なお魚に加え、2011年のB級グルメグランプリで注目を集めたカキ入りのお好み焼き「カキオコ」が堪能できます。


日生のB級グルメ「カキオコ」


普通Verでカキが6個、Wで12個入ります


休日には各地からの観光客で大行列


日生漁港でのお魚


土橋鉱山株式会社
〒705-0132 岡山県備前市三石2602番地。
現在、日本国内では数少ない良質のセリサイト(絹雲母)産出鉱山であり、セリサイト(絹雲母)の予想埋蔵量も200万トン以上で国内最大です。また、ろう石(パイロフェライト系)、硅石なども採掘しています。

【沿革】
昭和25年(1950年)
 岡山市西市中山下46番地に「幸陽通商株式会社」(当社の前身)の社名をもって設立。
昭和27年(1952年)
 商号を「川炉商事株式会社」と変更し、耐火煉瓦の販売代理店となる。
昭和32年(1957年)
 備前市三石、兄坂鉱山を買収。
昭和39年(1964年)
 備前市三石・土橋鉱山を買収。兄坂鉱山と鉱区合併を行い、土橋鉱山と称する。これより本格的な開発に着手する。
昭和62年(1987年)
 トラックレスマイニングの重機用斜坑道が完成。
平成6年(1994年)
 本社所在地を岡山県備前市三石2602番地に移転。
 商号を「土橋鉱山株式会社」に変更する。
平成20年(2008)
 L4レベル(-133m)からL5(-156m)へ掘進開始。


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