GFMS:最新2015年金需給レポート
昨年、コメックス金先物・オプションや金ETFにおける弱気傾向が顕著であった中、中央銀行のネット金購入量は、金本位制以降の高水準となっていたことが、世界でも有数な英国貴金属リサーチ会社、トムソン・ロイターGFMS社が本日発表した、2015年の金の需給データで明らかとなった。
主要な点は下記の通り。
- 中央銀行のネット金購入量は、金本位制が終了して以来の高水準。
- コメックスの資金運用業者のポジションは、11月と12月に8週続けてネットショートとなり、2006年の記録開始以来初めてのこととなった。
- 現物需要は2%減。これは、宝飾品需要の減少に起因するものの、中央銀行と金貨の需要でほぼ相殺された。
- 金価格はドル建てでは低かったものの、ドル高が宝飾品の需要を2166トンへと3%下げた。
- 総供給量も2%減。これは、主に金鉱会社などのヘッジポジションの変化によるもの。過去6年間の継続的な産出量の増加は、2015年後半期に止まり、世界の年間金産出量はかろうじて前年比増加となった。リサイクル量は、前年比少なからず増加したが、低い水準となった。
- 投資家のセンチメントの改善と、市場のファンダメンタルのサポートにより、金価格の上昇の基盤となった。
国別に見ると、インドが2015年に世界最大の消費国の座を取り戻した。インドの金需要は6%増加して936トンとなり、2位の中国を69トン上回った。
インドと中国の需要の詳細は下記の通り。
インド
宝飾品需要は前年比7%増で過去最高の736トン。これにより、他の地域での宝飾需要の8%減を相殺した。投資需要もまた、6%増の191トン。これは、2013年以来の高水準。インドへの金輸入総量は905トンへと上昇し、過去3年間でも最も高い水準となった。ちなみに2014年は826トン。
中国
中国の総需要(中央銀行の需要を除く)は867トンと、前年比7%減となった。昨年の需要減の原因は、前半期に15%減(宝飾需要16%減、地金需要17%減)と大幅に下げたことから。これは、同半期に中国株式市場が好調であったことが要因。それに対し、後半期の株式市場の急落、経済低迷への懸念は、金需要を高めて、前年同半期比5%増とした。2015年通年では、中国の需要の67%を占める宝飾品需要は前年比10%減(2013年比40%減)の580トン、金地金の需要は前年比2%減の199トン。
供給
世界の金産出量は1%増の3158トンと、2009年以来初めて年間産出量が増加。これは、インドネシア、米国がその産出量を増加させたことから、他の地域、特に中国と南アフリカの減少を相殺した。2014年のヘッジを行なっていた金鉱会社などが、2015年にde-hedgingを24トン行なったことから、
世界のリサイクル量は、前年比1%増の1173トンとなった。これは、2009年以来初の年間量の増加となった。これは、ドル建て価格が前年比8%減となる中であったが、これは、対ドル価値を下げた通貨の国々における金価格が上昇したことによるもの。
投資家センチメント
投資家センチメントは米国の金融政策に強く影響を受けるものとなった。それは、100年間の低金利政策から最初の金利引き上げが予想される中、ドル高となり、金相場やコモディティ相場全般を抑えることとなった。また、金ETFの残高の流出は、緩まったものの続き、124トン減(8%減)となった。また、コメックスにおいても弱気市場が見られ、資金運用業者の金の先物オプションのネットロングポジションは381トン減で、75トンのネットショートポジションとなった。実際、11月と12月には8週続けてネットショートとなり、2006年の記録開始以来初めてのこととなった。
2016年初頭のセンチメントの変化にも注目すべきであろうと、このレポートでは言及。それは、2016年のアジア市場における現物需要は引き続き低いものの、資金運用業者はロングポジションを伸ばしつつあること。コメックスの資金運用業者のポジションは、ロングが増加し、大量のショートカバーも起き、金のETF残高は、この間300トン増加し、主要ファンドにおいてこのポジションが増加傾向にある。
ブリオンボールト社のリサーチ部門は、オンライン金取引所有サービスを提供する世界有数の英国企業ブリオンボールトの、リサーチ主任エィドリアン・アッシュ、研究員ベン・テイラー、日本市場担当ホワイトハウス佐藤敦子を含む国際市場担当者によって構成されています。