ロンドン貴金属市場協会が取引量を公表する新たなレポートをローンチ
ロンドン貴金属市場協会(LBMA)がコメックス、上海黄金交易所、SPDRゴールドシェアと比較できるデータを今週から公表しています。
しかし、ロンドンの専門市場で会員によって取引される金取引量は、これまで予想されていた規模の半分ほどであったことが、今週火曜日から公表されたデータによって明らかとなりました。
世界で最も大量の地金が保管されているロンドンでは、先週一日あたり3,020万トロイオンス(939.3トン)が取引されていたことが、ロンドン貴金属市場協会の新たなプロジェクトのLBMA-i projectでこの会員が提出したデータによって明らかとなりました。
取引時は消費寄託で扱われる一日当たりの取引量の価値369億ドルは、ニューヨークを拠点とするコメックス派生商品市場の先週の一日当たりの取引量の1,062.5トンと比べると少ないものでした。
そして、上海先物取引所の取引量はさらに少なく80.7トンで、中国へ合法に地金を輸入することができる上海黄金交易所は46.7トンとなっていました。
また、株式市場で取引される金の上場投資信託(ETC)の最大銘柄のSPDRゴールドシェア(NYSEArca:GLD)の取引量は一日あたり0.9トン相当となっています。SPDRゴールドシェアは、ニューヨークの取引所で大部分取引され、この裏付けでロンドンのHSBCの保管場所で貯蔵されている金の残高は現在760トンとなっています。
LBMAの新たなデータを見てみると、巨大なロンドンのOTC取引の規模と特性を確実に量ることができる、「ジグソーパズルの一片だ」と、豪銀のマッコーリーの地金市場アナリストのマシュー・ターナー氏は述べています。
ロンドンにおいては、地金取引所を運営する代わりに、全ての取引は標準化された契約を利用し、一つのクリアリングハウスが唯一のカウンターバーティーとして全ての取引を執り行います。そしてロンドン貴金属市場は、それぞれの購入者と売却者が直接相対取引をします。
「こうすることによって、市場参加者は世界でこの市場の会員と取引をすることができるのです。」とLBMAが2015年に提出したイングランド銀行の「Fair & Effective Markets Review(FEMR)」レポートで述べています。このレポートは、その後ロンドンの値決め価格の計算方法を新たな方法で処理をすることと、月決めの金の保管レポートを発行すること、そして今回のテクニカルアナリスト会社のSimplitiumによって照合され、処理された取引量レポートの発表へと拍車をかけたのでした。
ロンドン市場は金の先物を提供していません。そのために、将来の価格の動きを予想して現時点で取引をする現物の取引を伴わない先物とは異なり、その時点の価格で決済をするスポット取引やスワップやフォワード取引やオプション取引や金の貸し出し等が行われています。
先週取引量においては、スポット取引が全体の61.9%を占める等ロンドンでは主流であるに対し、未決済の建玉においてはスワップとフォワード取引が全体の61.9%となっていました。
オプションと貸し出しの取引量はそれぞれ全体の2.7%と3.6%で、その未決済の建玉においては10.4と12.0%と先週の取引のレポートでは明らかとなっていました。
LBMAの会員のレポートされた総取引量では、コメックスの先物取引量を超えているものの、コメックスのオプションの取引量を加えると、この米国を拠点とする派生商品取引所が13.1%上回っていました。
しかし、ロンドンの主要ブリオンバンクが介した現物地金の量を加えると、実際に決済された量の3倍から5倍であることが、アナリストの共通した意見です。
ロンドンのクリアリングのデータを見てみると、場所の変更や精錬会社からデリバリーの代わりに返却された金鉱会社の口座へ戻された地金など、ロンドン貴金属市場協会が公表し始めた取引ではないけれども、ロンドンで取引された地金の量を含む統計では、決済された量の1.6倍となっていると、マッコーリーのターナー氏は述べています。
「市場の専門家が3倍、5倍、もしくは10倍と述べていることからも、この(新たな)割合は確かなものではないかもしれない。」と続けています。
金の業界のマーケティング団体であるワールドゴールドカウンシルが先週発表した最新の予想によると、ロンドンの取引量は、一日あたり約1130億ドルから2260億ドルと、このレポートの少なくとも3倍となっています。
「この最新のレポートがどのような数値なのか、そしてどのような数値を含んでいないかを明確にすることは重要です。」とターナー氏は述べています。
「すべてのLBMAの取引会員は彼らのロコロンドンとロコチューリッヒで行われたスポット、フォワード、オプションの取引を、一定の取引以下の小規模のものを除き発表しなければなりません。現在は13のマーケットメーカーと、他の29の企業がレポートしていますが、2019年1月には更に15の企業が参加する予定です。」
「しかし、これは他のOTC取引プラットフォームのデータを含んでいないとともに、LBMA会員以外の取引も含まれていません。そのために、この数値はLBMAの会員による取引量を表しているものの、ロンドンや世界の全てのOTC市場の数値を表しているものではありません。」
「これは、より充実した内容となるレポートの始まりであり、この規模の市場のデータとしてはラフなものです。」とLBMAのCEOのRuth Crowellは今日のインタビューで答えています。
この取引レポートのプロジェクトの将来については、現在未だ議論が行われています。「地金市場の中央銀行の役割の中で【完璧な】透明性は除かれるかもしれません。少なくとも公のレベルに対しては。」とLBMAは2015年に提出されたFEMRの中で述べています。「しかし、この透明性は取引後の取引量の匿名の統計や分析で高まることでしょう。」と続けています。
当初2017年にローンチされることが予定されていた新たなLBMA-iサービスは、今週20日にローンチされ、今後前週1週間の平均データが翌週火曜日に公表されます。
ブリオンボールト社のリサーチ部門は、オンライン金取引所有サービスを提供する世界有数の英国企業ブリオンボールトの、リサーチ・ダイレクターのエィドリアン・アッシュ、日本市場担当ホワイトハウス佐藤敦子を含む国際市場担当者によって構成されています。