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実質金利と金について

量的緩和とゼロレートは効果を発揮しませんでした。それでは、更なる規模の緩和とゼロ金利が必要なのでしょうか?

金は、他の投資資産のリターンが十分でない場合、その魅力が高まります。ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュが、実質金利と金の関係を解説しています。

10年を超える最低下限(sub-optimal)のリターンであった低迷期を越え、株式市場はその魅力を回復しています。そのために、資金運用者にとっては金投資は緊迫性を失っているのです。実際、S&P指数が史上最高値を更新する中、次に投資すべき株式を選択する間に、金はショートポジションで短期の利益を上げる対象となっているのです。

また株式市場が好調であることに加え、金価格が2011年夏の最高値から、実質的に20%下落したタイミングは、実質金利が上昇を始めた時期と重なっています。この事実に気がついている人は少ないかもしれません。特に、年金受給者や年金市場で個人年金の準備を行なおうとした人々は。しかし、債券王と称されるビル・グロースは、「30年の債券の強気市場は4月に終焉」で金利は近い将来に上昇すると述べています。

しかし、金市場を信じるのであれば、金利の周期は、実際は2年前に上昇に転じていたのです。



金は、年金ファンドや貯蓄のポートフォリオに痛手を与えるインフレをヘッジするために多く使われることが知られています。しかし、必要な時のみにインフレヘッジの効果を発揮するのです。そのため、債券や貯蓄がインフレに打ち勝っているのであれば、金の必要性は下がることとなります。

そうでない場合、例えば2001年に米国長期国債10年物の実質利回りが2%以下へと下げた際に、金は20年間の弱気市場から脱したのでした。ちなみに、この弱気市場は1980年初旬に実質金利が二桁に達し、インフレに打ち勝った際に始まったのでした。そして、米国長期国債10年物と英国債が下げ続け、その利回りがインフレを考慮後30年来の低水準へと至った2年前に、金価格は最高値を更新したのでした。

消費者物価指数は憂うべき数値で、実質金利は未だに悲観すべき水準です。しかし、その傾向は、現在は金投資にとっては有利なものではなく、債券のような確定利率商品に有利となりつつあるのです。「私達は、2012年7月に既にポジションを減らし始めていたのです。」と、かつてはSPDRゴールドシェアの保有高において8番目であった、Windhaven Investment ManagementのSteve Cocchiaro氏はCNBCに語っています。

Cucchiaro氏は、170億ドルの13%を占めていたポジションを減らした理由として、投資家の傾向を挙げ、トレーダーが、金が新たな記録に達しないことに落胆し、空売りを行なうことへの興味が高まってきたためとしています。しかし、マイナス金利が今後再び訪れたとしても、「私達は、インターネットバブルがはじけた後にグリーンスパン元FRB議長が金利をインフレ率以下に下げた過去10年間は、金に比重をかけてきたのです。」と述べています。

これは、正しい理由で良いタイミングであったことでしょう。しかし、他の大規模なファンドは、未だにその基本姿勢を貫いています。メディアにインタビューを受ける人々は、主要中央銀行の長期にわたる低金利政策によるインフレリスクが近い将来に現実となることを懸念しています。しかし、インフレが低く抑えられる中、実質金利は既に上昇しつつあるのです。

これを別のアングルで見ると、経済学者のポール・クルーグマン氏は、十分なインフレが存在しないとニューヨークタイムに寄稿しています。イングランド銀行の「十分な経済回復への意気込みが感じられないことが懸念材料です」とCapital EconomicsのVicky Redwood氏はCity AM紙で記しています。英国の財務相ジョージ・オズボーン氏は、新たな「Monetary Activism (通貨システムの変革)」をも求めています。これは、既にこの中央銀行が、その金融政策で大量な資金を市場に送り込み、英国の公的債務の3分の1を吸収しようとしているにもかかわらずにもです。

先からも分かるように、量的緩和とゼロ金利は実質的な効果は発揮しなかったのです。そのために、更なる政策が必要となっているのです。多くの人々は、更なる金融政策が必要とし、円が対ドル1セント下げるごとに、日経平均が175上がるアベノミクスの奇跡に注目しています。

今日のインフレを望む人々は、何れ望む水準を得ることができるかもしれません。今日の金の弱気市場を信じる人々は、金を売却したことを後悔するかもしれません。特にインフレヘッジを空売りをしている人々は。

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Adrian Ash, 18 May '13
エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

ブリオンボールト

プロフィール

ブリオンボールト

BullionVault

英国最大手のオンライン金地金取引サービス提供。英国女王賞を2009年に革新部門、2013年に国際取引部門で受賞。7万人を超える顧客の約38.7トンの金地金を保管。 ロンドン貴金属市場協会の正会員。ワールド ゴールド カウンシルの関連会社とロスチャイルドファンドが資本参加。

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