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金価格により大きな影響を与えたのはプーチン大統領もしくは米連銀なのか

利上げとウクライナ戦争の1年が過ぎようとしています。
ロシアがウクライナへの侵攻を始めてから24日金曜日で12ヶ月が経過したことになります。
そして、その3週間後には、米国連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを始めてから1年となります。

それでは、貴金属市場へより大きな影響を及ぼしているのはどちらなのでしょうか?

プーチン大統領が行っているウクライナ戦争は、引き続き世界政治を支配しています。そして、ロシアのこの行為は、同様にインフレを上昇させ続けています。そのようにきっと誰もが思っていることでしょう。

英国議会に提出された 報告書では、昨年のイギリスのパン価格の20%上昇(さらにバター29%、牛乳38%、オリーブオイル40%)を指して、「食品価格インフレの高止まりの大きな要因として、ロシアのウクライナ侵攻の結果、エネルギーコストが上昇していることが挙げられる」とされています。

「食料価格インフレにつながるもう一つの要因は、紛争がロシアとウクライナの両方からの食料輸出に与える影響です。」とも続けています。

別の言い方をすれば、「ロシアのウクライナ戦争は、 何億もの人々を極貧に追いやるかもしれない 」と、ここ英国の日刊紙Daily Mailは、エネルギーコストの上昇が 最も貧しい人々を直撃するという調査を引用しています。



しかし、このような歴史的分析が定まる前に、ロシアのウクライナ侵攻が昨年の2月に実際に始まる前に、エネルギーコストと主要なインフレはすでに主要諸国の経済で数十年ぶりの高さへ跳ね上がっていたことを思い出す必要があります。

実際、世界第一位の経済大国アメリカの消費者物価指数は2021年に7.2%上昇し、1981年以来の最悪のインフレ率となった後に、2022年には6.4%の上昇にとどまっています。

もちろん、米ドルの急騰が大きく影響しており、2022年夏に、外国為替市場で米ドルは21世紀に入ってから最も高い価値を記録していました。

天然ガス、原油、穀物などのコストは、ユーロや円、英ポンドで支払っても下がることはありません。

それでも、エネルギー価格は、ロシアの戦車が国境を越えたあの暗黒の日に比べれば、はるかに低くなっています。

他のほとんどの「ロシア関連」商品価格も同様で、最も顕著なのはパラジウムですが、アルミニウムと銅も同様です。一方、モスクワの株式市場は、少なくともルーブル建てでは上昇しています。



西側諸国の制裁にもかかわらず、ロシアから世界市場にエネルギー商品が供給されているという事実がどうであれ、エネルギー料金にその恩恵が現れることはないでしょう。

自動車への給油も、(ディーゼルでなくガソリンの場合)12ヶ月前とほぼ同じ値段になっている。

当時はかなり過去最高だったが、 昨年6月のピークを大幅に下回り、米国のドライバーにとっては1ガロンあたり1ドル以上の下げとなっている。

それでも、スイスの精製会社MKS Pampのニッキー・シールズ氏のコメントにあるように、原材料の絶対コストはプーチンの戦争のショックから立ち直ったというよりも、戦争が長引き、何千人もの死者を出しながら何も達成できなかったとしても、下げているのです。

FRBのインフレとの戦いについてはどうでしょうか?



このチャートは、CMEデリバティブ取引所からのものです。

これは、金利を取引するトレーダーが、2023年のクリスマスに米国FRBが主要金利をどこに設定するかについて予想しているかを示しています。

ちょうど1ヶ月前、トレーダーは、FRBが今年の年末までに現行金利である4.75%かそれ以下で終えると見ていました。

しかし、利上げなし、あるいはあと数回の利上げとその後の大幅な利下げという予測は、現在では6%未満に逆転しています。

そして先のチャートで見られるように、金利トレーダーの大半は、FRBが5.25%以上の金利を上限として2023年を終えると考えているのです。

先月の今頃は、その可能性は2%以下とされていました。

そのため、金(と銀)価格は先月のピークから大きく転換したのです。なぜなら、誰もがFRBが利上げから利下げに「軸足を移す」ことを予測するのではなく、突然、誰もがFRBは利上げを続けると考えるようになったからです。

そう、FRBが言い続けてきたようにです。

この「軸足がぶれる」ことの根本的な理由は何でしょうか?好調な雇用統計、好調な小売売上高、予想を上回るインフレ率、そしてFRBのこれまでの利上げは経済を破綻させるものではないという新たなコンセンサスです。

債券市場はこれに同意していませんが、国債の価値は過去12ヶ月で20%も下落しており、 テスラの株価が年初から92%も上昇しているのに、誰が逆イールドカーブを気にするのでしょうか。

だから、プーチン大統領(とバイデン大統領、習近平国家主席、その他すべて)から目を離さないようにしましょう。しかし、FRB にも目を配り続けましょう。特に、FRBが何を言おうと、投機家や専門家がFRBはどう行動すると考えているかという、回りくどいプリズムを通すことが必要です。



インフレを考慮すると、銀行にある現金に提供される金利に応じて、その資産の将来の価値を上げる(または下げる)ので、金利は金価格(と銀や他の貴金属)に影響を与えます。そこで、それは株式市場の株式と同様に、投資家や貯蓄者にとって金の主な競争相手となるのです。

地政学的な争いについては、その影響はあまり定かではありません。

ソ連のアフガニスタン侵攻(1980年の新年に金がトロイオンスあたり850ドルまで急騰した時)には、ロシアのクリミア侵攻(2014年に金が下がり続けた時)、キューバのミサイル危機(自由に取引される金がトロイオンスあたり35ドルの固定為替相場制の時)、日本海への北朝鮮のミサイル発射(近年、これらの恐ろしい瞬間に金が下げたていました)などがあるのです。

とはいえ、金を買う理由は地政学的に多くあります。例えば、昨年の中央銀行の強い需要は、ロシア、中国、その他の 西側制裁に見舞われた、あるいは恐れている国々が金準備を積みますことを選択したため、市場の底上げにつながったのです。

また、昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻の衝撃により、欧州が1945年以来初めて大国間の戦争を経験する中、金は明らかに「安全な避難場所」としての需要を増加させて、上昇していたのです。

現段階では第3次世界大戦とはなっていなません。そして、2023年がそのような事態にならないことを祈るばかりです。
(2023/2/23記)

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

ブリオンボールト

プロフィール

ブリオンボールト

BullionVault

英国最大手のオンライン金地金取引サービス提供。英国女王賞を2009年に革新部門、2013年に国際取引部門で受賞。7万人を超える顧客の約38.7トンの金地金を保管。 ロンドン貴金属市場協会の正会員。ワールド ゴールド カウンシルの関連会社とロスチャイルドファンドが資本参加。

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